調達額1兆円超えの配車アプリ「滴滴」VS「ウーバー」の終わりなき資金獲得戦争

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中国の配車アプリ最大手、「滴滴出行(ディディチューシン)」は6月16日、新規および既存の投資家から新たに73億ドル(約7,600億円)を調達した。

エクイティによる資金調達額は45億ドルで、アップルとアリババ、金融企業のアント・フィナンシャル、テンセントなどが資金を提供した。また、中国人寿保険による長期社債の取得と、中国招商銀行が組成したシンジケートローンから35億ドルを調達した。

これにより滴滴の手元キャッシュは105億ドル(約1兆1,000億円)に積み上がり、最も資金力のあるネット系スタートアップとなった。関係者によると、今回のラウンドでの評価額は280億ドル(約2兆9,000億円)近くに達するという。

滴滴の中国シェアは9割でウーバーを圧倒

最大のライバルであるウーバーがサウジアラビアの政府系ファンドから35億ドルを調達して話題を呼んだばかりだが、滴滴はわずか2週間でその額を上回った。調査会社の推計によると、滴滴の中国でのシェアは90%以上で、ウーバーの約10%に大差をつけている。

ウーバー以外の競合には、ビリオネアの賈躍亭(ジア・ユエティン)が創業した動画配信サイト「LeEco」が出資する「Yidao Yongche」(易到用车网)や、レンタカー会社「CAR Inc.」と提携している「Ucar」が含まれる。

滴滴は中国の400都市でサービスを展開し、配車件数は1日当たり1,400万に達するが、黒字転換はまだできておらず、直近の評価額は非常に高いと言える。

滴滴の主な収益源は広告売上と手数料収入だが、割引クーポンの発行やR&D関連の経費がかさんで現状は赤字が続いている。競合も同様に苦戦しており、ウーバーは昨年中国で10億ドルの赤字を計上したことを明らかにしている。

ウーバーは他の先進国では黒字化を達成できているという。Ucarもレンタカー費用やドライバーの給与でコストがかさみ、昨年は37億元(約590億円)の赤字だったことが上場申請書類に記載されている。

滴滴は財務情報を公開していないものの、400都市の約半分で黒字化を達成したとしていることから、残りの都市ではまだ赤字であると推測できる。同社は新たな収益源として、法人向け配車サービスや自動車のEC事業を検討しているという。
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編集=上田裕資

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