マネー

2016.06.28

日本でシリコンバレー流エコシステムが生まれない理由

早稲田大学ビジネススクール准教授 樋原伸彦氏(左)、ベンチャーキャピタリスト アニス・ウッザマン氏(右)


最近はイノベーションのサイクルが速く、2年で主流のプロダクトが入れ替わるような時代。日本の大企業がイノベーションを起こすためには、スタートアップとの提携や買収も視野に入れて、日本の素晴らしい技術を守っていく必要があるのではないでしょうか。

大企業による提携や買収が増えることで、スタートアップにとってもEXITの機会が増えるので、起業する人も増加します。このエコシステムを上手く回していくのが大企業の役割だと思います。

樋原:政府が、大企業に働きかけてイノベーションを起こさせるという方向性は間違っていないと思いますが、スタートアップは駄目だから大企業の中だけでイノベーションを起こそうというのは違うのではないでしょうか。

大企業がスタートアップに門戸を開いて、オープン・イノベーションをいかに実行するかを考えていくことが重要です。日本の大企業は、未だにスタートアップからプロダクトやサービスを買うことに対して躊躇することが多い。スタートアップの資産基盤を不安に思うのは理解できますが、技術や製品を評価しているのであれば、それを活かす方法を模索すべきです。

ウッザマン:大企業も変わりつつありますよ。フェノックスと付き合いのある日本企業でも、海外のテクノロジーやプロダクトをできるだけ早く手に入れたいという企業が出てきました。その動きから見えてきたニーズが3つあります。

1つは、海外のテクノロジーやビジネスモデルを数多く見たいというニーズ。自分たちの開発やビジネスプロセスを改善できるのではないかという期待を持っているのでしょう。2つ目は、見るだけではなく投資も行い、将来的に投資先の企業が日本に参入する際、販売代理店として展開したいと考えている企業もあります。3つ目は、海外からユニークな技術を輸入するだけでなく、投資先を窓口として、将来的に自分たちのプロダクトをグローバルに展開していきたいというニーズが見えます。

アニス・ウッザマン◎Fenox Venture Capital 共同代表パートナー & CEO。シリコンバレーにてフェノックス・ベンチャー・キャピタルを設立。主に初期投資とファイナルラウンドを専門とし、インターネット、ロボット、AR/VR、IoT、ヘルスIT、フィンテック及び最新技術分野への投資を行っており、ユニークなモデルとグロ-バルなコネクションを使い、新時代のベンチャーキャピタルを運営。現在、全世界で20億~200億円の13のファンドを運営している。

樋原伸彦◎早稲田大学ビジネススクール准教授。1988年東京大学教養学部卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタント、通商産業省通商産業研究所(現・経済産業省経済産業研究所)客員研究員、米コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、カナダ・サスカチュワン大学ビジネススクール助教授を経て2006年立命館大学経営学部准教授。2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。専門は金融仲介論とコーポレートファイナンス。

構成=筒井智子 写真=藤井さおり

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事