中古品は恥と考える中国人 シェアエコノミーをとりまくアジア特有の事情

Justin Sullivan / gettyimages

カニカ・テキワルが2年前にインドでプライベートジェットのシェアサービスを始めた時、航空機のオーナーたちは非協力的だった。小金を稼ぐことに興味がない大富豪たちは、航空機を貸し出すことで収入を得ることを魅力的と思わなかった。しかし、4人が貸し出しを承諾すると、他の航空機オーナーも続々と後に続いた。テキワルがCEOを務めるJetSetGoは現在、シェア可能な航空機を90機確保している。

アジアの多くの国々ではシェアや中古品に対する抵抗感が強く、タクシー配車のウーバーのようなシェアリング・エコノミー系アプリの成功を阻む壁となってきた。香港の運送シェアアプリGoGoVanの創業者兼CEOのスティーブン・ラムも、顧客やドライバーを獲得するのに苦労した開業時を振り返り、「中国やアジアでは、人々は中古品を買いたがらない。自分の何かを誰かとシェアする発想もない」と語った。

シェアリング・エコノミー市場は2025年までに世界で3,350億ドル(約36兆円)規模への成長が見込まれる。アジア単独の数字はないが、世界でアジアが占める比率は低くないだろう。そして成功のかぎを握るのは、アジアマーケット周辺の安定や一部国家での規制、そしてシェアという行為への許容度だ。

アジア人たちはメンツを重視する。人前で古着と分かる服を着たり中古車を運転したりするのは、メンツを失う行為に他ならない。特に中国では、不動産を持つのは、それにまつわる悪い因縁も引き継ぐことになると信じられている。中国や台湾には、賃貸に出すことで、不動産価値は半減すると考えるオーナーもいる。

しかし、若い世代はそのような迷信を信じたり、メンツを気にしたりしているわけではないようだ。調査会社ニールセンが2014年に実施した調査では、アジア太平洋地区の消費者の78%が個人資産のシェアや貸し出しに前向きという結果が出ており、その数字は世界平均より10%高かった。中国では調査対象の94%、インドネシアでは87%が、シェアリングサービスを利用して、他人の物を利用することに抵抗がないと回答し、この比率も世界平均の66%を上回った。1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、タクシーやホテルの予約でアプリを使い慣れている。

シェアリング・エコノミーの起業家たちも、状況の変化を感じている。富裕層はお手伝いさんやベビーシッターに家を使わせることに慣れており、オンラインで出張シェフを予約したり医師の往診サービスを提供するアプリも人気となっている。

英国で出張マッサージ師と顧客を結ぶプラットフォームを運営するUrban Massageの創業者でCEOのジャック・タンは、イギリスからの移民が多い香港かシンガポールのいずれかの都市に、アジア最初のオフィスの開設を計画している。タンは言う。「アジアの人々は“論より証拠”だ。誰かが使って評判が広がると、そのサービスは広がっていく」

編集=上田裕資

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