職場はうつ・不安症を放っておけない いま真剣に取り組むべき理由

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薬局チェーン世界最大手のウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスは5月下旬、精神保健に関するサービスを拡充し、調剤に加えて診断のための検査や遠隔治療の提供を開始すると発表した。同社がこうした行動に出ることで、人々の間の認識が高まると期待されるが、なぜ認識の向上がそれほど重要なのだろうか?

その理由は、米国人の5人に1人が現在、精神衛生上の問題を抱えているといわれることだ。糖尿病や心疾患に苦しむ人たちの数を上回っている。先月公開された医学誌「ヘルス・アフェアーズ(Health Affairs)」によると、米国では2013年、精神保健分野で支払われた医療費が、その他のいずれの分野よりも多くなった。また、処方箋の発行数は、精神疾患などの治療薬向けが、身体的な疾患向けを上回っている。

精神衛生上の問題を抱える人たちにとって、検査、問題の認識、治療は重要なことだ。そして同時に、これは私たちすべてにとって大切なことだ。社内に問題を抱える人がいれば、教育や支援を通じて必要な治療を受けてもらわなくてはならない。この点に同意できないという人は、以下を読んでほしい。

1. 精神衛生上の問題は、治療の開始が大幅に遅れる場合が多い。米科学的心理学会(The Association for Psychological Science)によれば、うつや不安神経症などの精神疾患を発症した人のうち、治療を受けている人は59%にとどまっている。

2. 精神疾患の治療をめぐる不名誉なイメージは低くなりつつあるものの、なくなってはいない。私たちは、(他人からの評価についても)不安を感じる行動には出ないものだ。

3. 精神衛生に関する問題は、依然としてタブー扱いされている。同意しないという人は、自分の身近な問題として考えてみてほしい──最近、うつで傷病手当を申請した同僚がいるだろうか、申請したのはいつだっただろうか?答えられるか疑問だ。

4. 先ごろ発表された追跡調査の結果、心理的にさまざまなことを要求される仕事上のストレスは、うつや不安神経症の発症につながるものだということが確認された。

5. ストレス度の高い環境にいる人たちが精神衛生上の問題を発症する可能性は、そうでない人たちに比べて2倍高い。

治療が必要な人のすべてが治療を受けるとは考えづらい。だが、ウォルグリーンは2017年までに、300万人の検査を行うことを目標としている。
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編集=木内涼子

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