日本に「失敗を許容する」カルチャーを

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シリコンバレーにおける成功のキーワードは「リスク」である。米国にはリスクマネーがあり、リスクを取る起業家がいて、そしてリスクを取って失敗した人を許容するカルチャーがある。

日本人はリスクを取りたがらない民族だと言われる。リスクを取って投資する人もリスクを取って起業する人も少ない。

しかし本当に問題なのは失敗した人を許容しないカルチャーにあると思う。

不倫、学歴詐称、賭博と次から次へと繰り出される著名人たちのスキャンダルはメディア的には間違いなく金の成る木である。紳士淑女キャラクターで世の中に出ていた人たちの物語を臨場感のある物語に仕立てるメディアと、賢人面して酒のつまみにするオーディエンスたち。

こんなのはジャーナリズムでは無い、とメディアの姿勢を批判する声も多い。たしかにゴシップなどではなく、より建設的で知的なコンテンツを供給するメディアにもっと出てきてほしい。しかしゴシップであろうが、読者が読みたいコンテンツを提供するのは立派なビジネスである。

ただ一連の報道において、皆、多かれ少なかれ人生の進路を変更せざるを得ないほどの致命傷を負った。問題は、その致命傷は、スクープという形で問題を表面化させたメディア側が負わせたものではなく、読み手あるいは聞き手である国民側が負わせたものであることだ。

法律に違反したり、倫理に反することをしたなら、その償いをさせればいい。

しかし失敗した人にもう一度チャンスを与える社会が絶対に必要である。でないと日本がますますつまらない国になる。

文=高野真

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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