「新しい取り組み、より良い手法」はすべてテクノロジーだ

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我々はスマートフォンを手に、アプリ一つで音楽を聴き、動画を観て、 SNSで誰とでも気軽につながることができる。確かに、世の中は便利になった。しかし、1969年にアポロ11号のニール・アームストロング船長が人類史上初の月面着陸に成功してから早や47年。当時、SF小説で描かれた、空飛ぶ自動車や宇宙旅行はいまだに実現していない。

いま、そんな「停滞」を打ち破ろうとしている人たちがいる。シリコンバレーを中心に成功した富豪起業家たちである。ペイパル共同創業者のイーロン・マスクやピーター・ティール、アマゾンのジェフ・ベゾスらがIT分野での成功で得た富を、宇宙開発や延命技術などの壮大なプロジェクトに注ぎ込んでいるのだ。

4月には、マスクのスペースX社とベゾスのブルーオリジン社が相次いでロケットの垂直着陸を成功させている。ロケットの再利用が可能になれば、打ち上げのコストと時間が削減でき、衛星の打ち上げ、宇宙探索、国際宇宙ステーション(ISS)を使った宇宙空間での実験などに資金と時間を有効に投じることができる。遠からず我々一般人の宇宙旅行も可能になる。また、宇宙関連企業の勃興により、宇宙を舞台にした新たなエコシステムも生まれるはずだ。

変化は地上でも起きている。アメリカの西海岸や欧州では、時速1,200kmで走る超高速鉄道の計画が進んでおり、線路の敷設も始まった。昨今、無人自動車への関心が高まっているが、すでに可変飛行型自動車を開発している会社もある。

「問題は技術にではなく、ビジネスモデルや社会など別のところにある」と、超高速鉄道「ハイパーループ」を開発中のダーク・アルボーンは話す。

社会問題に向き合う姿勢こそがイノベーターの本質であり、技術は手段に過ぎず、その限界を“言い訳”に使うべきではないと考えているのだ。こうした革新者の登場により、テクノロジーの進化は加速し、それが同時にビジネスモデル自体を進化させる。そして、社会の仕組みそのものにさらなる地殻変動を起こすことになるだろう。

とはいえ、多くの企業には既存のビジネスがあり、スタートアップのようにゼロから何かを始めるのは容易ではない。それでいて、マインドセットを変えなければ、21世紀を生き残るのは難しい。
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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