すでに大企業の3分の1近くが、従業員が加入する健康保険でGRSを給付金の支払い対象としている。ただし、保険コンサルタントによれば、こうした傾向には企業の規模や所在地域によって大きな隔たりがあるという。
マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ傘下のコンサルティング企業、マーサーによると、大企業の間でGRSを支払い対象としている企業が最も多いのは米西部(17%)となっている。全米でみると、従業員が2万人を超える企業の場合には29%が適用の対象としている。
また、従業員が500人以上の企業のうち、2015年にGRSを給付金支払いの適用対象としていた企業は全体の約10%だった。2013年と比べると倍以上に増加しており、2014年からは8%の増加となっている。さらに現在、同規模の企業では約5%、より大規模の企業ではそれ以上の割合が、対象に含めることを検討中だ。
これら企業の方針変更の背景には、全米に広がりをみせる性別を理由とした差別を禁止すべきとの考え方がある。オバマ政権はトランスジェンダーの人たちに対する米軍入隊規制の撤廃の方針を示しているほか、今年5月上旬には国内のすべての公立学校に対し、トランスジェンダーのためのトイレや更衣室を設置するよう指示した。
企業が従業員に提供する健康保険にGRSを含めることを義務化する州も増えており、保険各社も前向きに対応している。米医療保険大手エトナもその一社だ。2015年には連邦政府職員を対象とした33タイプの健康保険で、GRSを手術給付金の支払い対象とした。
対象となる手術には、外性器再建術のほか豊胸・乳房縮小手術も含まれる。一方、顎や頬のインプラント、のど仏の削除、コラーゲン注入などは医学的に必要な処置とは考えられないとして、適用外とされている。美容整形術にあたる処置も給付の対象外だ。保険各社が支払い対象としている処置や給付の条件などについてはさまざまで、勤務する企業が加入している保険によって、受けられる処置には差があるのが現状だ。