ビジネス

2016.05.18

「使われていない駐車場」が価値を生む

奈良市古市町のakippaの提携月極駐車場

個人宅や企業が所有する「使われていない駐車場」に目をつけ、2014年に「一日単位で予約できる格安駐車場」のサービスを始めたのが大阪本社のIT企業「akippa」だ。

社名と同じ名前の駐車場予約サービス「akippa」は、スマホひとつで誰でも予約でき、保有する駐車場の貸し出し登録も簡単に行える。渋谷や六本木など駐車場の数が少なく料金が高い都心でも、相場の約半額という安い値段と一日単位で借りられることから、サービス開始2年で急成長。登録台数ベースでは駐車場業界2位に迫るところまできた。

そのakippaが現在、力を入れて営業するのが、「地方の大きなイベント会場の周辺地域」だ。同社社長の金谷元気はその意図について次のように語る。

「甲子園の周りにはコインパーキングが少なく、夏の高校野球やプロ野球のシーズン中はいつも満車でした。そのため車で甲子園に行くことを多くの人が諦めていましたが、付近の個人宅の空いている駐車場が次々にakippaに登録されるようになり、予約すればプレイボール30分前に行っても駐車できるようになったんです。福岡ドームや札幌ドームの周辺もコインパーキングが少なく、月極や個人宅の駐車場は余っている状況なので、これからどんどんakippaの駐車場が増えていくでしょう」

土地が空いていても通常のコインパーキングを開業するには、ゲートや車の固定具、料金の支払機などを設置する必要がある。akippaの駐車場はネットで予約し、事前にクレジットで決済するため、設備投資が一切必要ないのも貸し手にとって大きな魅力だ。

またakippaでは「全国のコンビニ周辺の駐車場」も続々と開拓している。コンビニに商品を搬入するにはトラックを近くに駐車する必要があるが、駐車場を保有していない店はコンビニ全体の約3分の1に及ぶ。そのため多くの店では仕方なく路上に駐車して搬入作業を行っているが、付近住民から多数のクレームが寄せられる大きな原因となっていた。

「現在、大手コンビニチェーン3社のうち2社と業務提携して、お店近くの空いている駐車場の確保を始めたところです。今まで空いている駐車場は遊ばせておくしかりませんでしたが、akippaを利用すれば、ほとんど手間をかけずに、その土地が価値を生んでくれるようになります」

akippaではこれまで一日単位の予約のみに対応していたが、今年4月からは時間貸しの試験運用も行い、回転率の向上を狙うという。

AKIPPA
プロサッカー選手を目指していた金谷元気(1984年生まれ)が2009年に創業。駐車場のシェアリングサービス「akippa」は、15年のIVSが主催するベンチャーアワードで優勝するなど注目を集める。

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甲子園球場近くで駐車場を貸し出しているオーナーの黒岩さん。シーズン中はほぼ予約で埋まる人気だ。


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大越 裕 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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