ビジネス

2016.05.24

コマツ、SBプレイヤーズ 課題山積の地方を救う「大企業」の知恵

ICT建機のショベルカーが残土を台形にする。若い女性でも法面(のりめん)形成を熟練なみに実質12時間でできた。ブルドーザーの排土板(ブレード)を上げ下げして凸凹地面を平面化する作業も、自動制御が行う。(photograph by Peter Stember)


07年、ふるさと納税の制度ができると、「ばんえい競馬の支援に使ってほしい」というファンが次々と帯広市に寄付を始めたのだ。馬券のように、納税を手段にしてお金を地方に回せるのではないか。

「震災後、各地をまわっていると、ふるさと納税で活性化しているところを見聞きしました。より多くの地方にこの取り組みが広がればと思ったのですが、それができない自治体があります。システムをつくってインターネットで受け付ける仕組みに投資してよいか、行政が判断できないのです。寄付が集まるかどうかわからないものに予算を投入するわけにはいかないから仕方がない。そこで、寄付が集まらなければ、手数料はゼロというモデルを自治体に提案し始めました」

返礼品の開発、コールセンター、物流管理などを一手に引き受けるサイト「さとふる」をスタートさせたのだ。

全国の競馬場巡りに続き、藤井は旅人のように地方自治体をまわる生活を続けていると、気づくことがあった。自治体の首長とその土地のおいしいものを食べていると、出された食事に対して反応はふたつに分かれる。

ひとつは、「こんなの当たり前の味だから、東京じゃ売れないよ」。次が、「東京で販売すればバカ売れするのに、東京の人は全然売ってくれないんだよ」。宝の持ち腐れか、自己都合の主観的な魅力か。つまり、自分たちの町がもつ価値を客観的に評価できる指標がないのだ。これが、地元の人たちに「私たちの土地の魅力は何か」を考えてもらうきっかけになった。

「ふるさと納税がブームになっているから、何か新しいものをつくるのではなく、東京の人たちと一緒にいいものを探そうよという取り組みを始めました」

また、商品だけではなく、納税者にはその土地のファンになってもらうことを目指し、実際に足を運んでもらう企画も始めている。

2014年、ふるさと納税として納められた額は3年前の3倍となる389億円以上になった。お金はあるところにはあるのだ。

KOMATSU
大橋徹二◎1954年、東京都出身。東京大学工学部卒業後、77年に入社。84年にスタンフォード大学院修士。89年英国コマツに赴任。その後真岡工場の黒字化やコマツアメリカの鉱山機械事業再建を果たす。13年より現職。

SB Players
藤井宏明◎1994年、慶應義塾大学理工学部卒業後、東日本旅客鉄道入社。「えきねっと」事業の立ち上げに携わる。2005年に設立したSBプレイヤーズの社長に就任。子会社のたびりずむ会長、騎手が乗った鉄そりを引くばんえい競馬レースの様子。 さとふる社長などを兼任。

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[左、右上]ふるさと納税の返礼品の開発、コールセンター、物流管理などを引き受ける「さとふる」のサイトとコンシェルジュ。
[右下]都市部の女性も事業に参加。

藤吉雅春 = 文 ピーター・ステンバー = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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