納税問題は政治家の息の根を止め得るか──「パナマ」が消えることはない

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米国では大統領選の前に、候補者がそれぞれの納税申告書を公開することが選挙戦の「呼び物」になっている。英国ではそうでもないが、デービッド・キャメロン首相が最近学んだように、納税は一年のうちのどの時期であっても、またどの国においても、軽々しく扱ってはいけない問題だ。

「パナマ文書」と自身の関わりについての首相の対応は遅すぎたし、十分とは言えないかもしれない。だが、納税申告書の公開は誰にとっても、簡単に応じられるものではない。公開したところで、大して何も明らかにならない場合もある(共和党の大統領候補に名乗りを上げたマルコ・ルビオや、テッド・クルーズがその例だ)。ドナルド・トランプは、公開を拒否。理由として過去12年間にわたり、米内国歳入庁(IRS)から監査を受けていることを挙げて、そのバーコードヘアと同じくらいに大きく眉をつり上げてみせた。

だが、彼らが直面する問題は、キャメロン首相が抱える問題に比べればはるかに小さい。首相は亡父とパナマとの関係で、今も批判の矢面に立たされている。母親から20万ポンド(約3,104万円)の贈与を受けていたことが明らかになり、2009~15年までの納税状況を記した報告書を公開するに至った。問題の鎮静化を図るためには、公開する以外の選択肢がなかったのかもしれないが、英首相がこうした情報を公にするのは異例のことだ。

迷った揚げ句に公開を決意した首相は、父親とタックスヘイブン(租税回避地)に設けたファンドとの関係が明らかになった直後に、「もっと適切な対応ができたはずだった」と認めた。さらに、この「新たな福音主義」の下、脱税行為に関する調査を担当する新たなチームを設置すると発表した。

一方、米国ではこれほどの対応は期待できないだろう。

米国の政治家と納税

政治の世界では、税金に関する情報公開は「観客」のために行うことだ。詳細をすべて説明するよりも、概要を文書で公開してしまう方がずっと簡単だ。民主党の大統領候補を目指すバーニー・サンダースは納税状況に関して、ほぼ透明性を維持してきたといえるだろう。高額の納税申告は非常に複雑なのだと伏線を張るトランプに比べ、サンダースは自分の納税状況を、「驚くようなものではない」と話している。

だが、サンダースはCNNに対して、「申告は妻に任せている」「忙しかった」などとして説明を拒否した。こうした態度を受け、納税に関するすべての情報を公開しているとの同氏の主張に疑いを持つ人も出始めている。

また、テッド・クルーズは内国歳入庁(IRS)の廃止を訴えている。トランプはこの案に賛成すると思う人もいるだろう。トランプは長年にわたって自身がIRSの標的にされている理由について、自身の信仰と関わりがあるなどとも主張している。

タックスヘイブンをなくせば解決?

これらの米国の政治家たちの話は、パナマ文書とはまったく無関係に思えるかもしれない。だが、公開されたデータの中には、現職・元職の各国のリーダー12人の名前が挙げられている。また、富裕層の多くも、保有する財産を隠すためにタックスヘイブン(租税回避地)を利用している。

国際的な透明性が求められるこの時代に、こうした一部の者の行動がいかにその他すべての人々に影響を与えてきたかについて、考えてみることには価値がある。パナマ文書の公開は、非常に興味深いタイミングで行われたといえるだろう。

タックスヘイブンを最も声高に批判してきたのは米国だ。取り締まりを強化するため、米政府は外国の金融機関に対し、米国人顧客の身元と保有資産の報告を義務付ける「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」を成立させた。しかし、それでも最近では、世界で最もタックスヘイブンとして人気を集めているのは米国だといわれている。

どこかの国や地域で何らかの規制を強化しても、タックスヘイブンが世界中から消えてなくなることはないのかもしれない。

編集 = 木内涼子

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