元オペラCEOが「完全自己資本」で再起業 新ブラウザVivaldi発表

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クロームとFirefoxが、万人向けにブラウザ機能をシンプルにしているのに対して、業界のベテランが立ち上げたスタートアップは機能の豊富さで勝負しようとしている。

その企業の名前はVivaldi(ヴィヴァルディ)。同社が開発した新ブラウザ「Vivaldi 1.0」は、約1年前に公開後、ベータテストを経て4月6日に正式リリースされた。インターネットのヘビーユーザー向けの仕様で、パフォーマンスの速さと多くの機能をカスタマイズできるのが売りだ。同社を率いるヨン・フォン・テッツナーは、Opera(オペラ)の共同創業者で2004年にIPOを果たしている。

ダウンロード数は既に数百万件

ヴィヴァルディは、ショートカットキーやホットキーをはじめ、ネットを多用するユーザーには嬉しい機能が満載だ。大きな特徴の一つが、同一画面に複数のサイトを表示できることだ。また、複数のタブをひとつのグループにスタックしたり、まとめたタブを並べて表示することもできる。タブの表示位置もカスタマイズでき、ブラウザ内の上下左右、好みの場所に設定できる。マウスを多用するユーザーは、マウスジェスチャーによって様々な操作をマウスで行うことができ、キーボード操作を好む人にはショートカットが多数用意されている。

Vivaldiは競合する大手ブラウザの流れに逆行して機能を豊富に搭載しているが、ダウンロード数は既に数百万回に達し、月間数十万人ものユーザーが利用しており、「テック層以外のニーズも大きいことが証明できた」とCEOのフォン・テッツナーは話す。同社は、エバンジェリストたちにVivaldiの使いやすさを口コミで広めてもらうことでユーザー数を増やしたいと考えている。「人から勧められて一度でも使ってみれば、Vivaldiの価値を理解してもらえるだろう」と彼は言う。

フォン・テッツナーはオペラ時代に初めてアドレスバー検索を採用したことで知られる。彼はVivaldiのデフォルトの検索エンジンに、様々なメリットを考慮した上でBingを選んだという。Vivaldiの収益源はアフィリエイトや広告で、「ユーザー数が数百万人に達すれば採算ベースにのる」とフォン・テッツナーは話す。

Vivaldiはノルウェーのオスロに本拠を置くが、米マサチューセッツ州グロスターとカリフォルニア州パロアルト、アイスランドのレイキャヴィークにもオフィスがある。VivaldiはChrome同様にオープンソースのChromiumをベースにしており、主要なアップデートは6週間ごとに行わるが、小規模な改良は常時行われるという。

この手のスタートアップとしては珍しく、フォン・テッツナーは全て自己資金でVivaldiを立ち上げた。

「オペラのときは、株主と経営陣との間の緊張が絶えず、何をするにも苦労した」と彼は話す。フォン・テッツナーは2010年にオペラのCEOを退任し、その一年後に同社を去っている。現在、オペラのシェアは約5%で、世界で6番目に利用されているブラウザとなっている。今年2月にはQihoo 360(奇虎360)を含む中国の投資家から買収提案を受けた。Vivaldiはフォン・テッツナーが経営権を握っている限り、万人受けするように機能を変更したり、売上を優先してブランドを棄損するような提携をするといったプレッシャーを投資家から受ける心配はない。

編集=上田裕資

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