「社員のやる気」日本一! サイバーエージェントの秘密

サイバーエージェントのオフィ スでは、新卒者や中途入社の社員のデスクには「風船」(写真奥) をつないでいる。そうすることで 周りも声をかけやすくなり、職場 に早く馴染めるからだ。(photograph by Koutarou Washizaki)


小池はまず、社内の「アンサング・ヒーロー(縁の下の力持ち)」に光を当てる気風を社内につくろうとした。4歳のときからラグビーをしていた彼は、トライなどの華やかなプレーの陰には、タックルやパス出しなどの目立たないプレーで貢献する選手の存在があることをよく理解していた。こうした“陰のファインプレー”をきちんと認知し、評価できる環境が大事だと考えたのだ。

「五郎丸歩選手のキック成功の陰には、体を張って潰れ役になっている選手がいますよね。彼もそのことを理解していて、メディアに『全員が主役です』とチームメートの重要性を伝えています。その『チームワーク』の良さがあの歴史的な勝利を生んだ原動力につながっています。そうした気風を育んだ結果、表彰された社員が、自分を支えてくれた社員を褒め称えたりするようになり、チームを支える社員のロイヤリティが向上しました」

次に取り掛かったのが、社員間にあるコミュニケーションギャップを埋める仕組みづくりだ。小池は、このギャップを「間」と呼んでいる。

「組織には、世代や業務など縦横の関係に必ず『間』があります。こうした“コミュニケーションの壁”を解消する仕組みが必要でした」

小池はこの「間」の存在を石井に教わった。もともと西日本事業部は設立当初、中途採用者が多く、新卒採用者との間に溝があった。そうした「縦の間」を埋めていくことで西日本事業部が成長する様を目の当たりにしてきたのだ。

「出張中も部下の日報には必ず目を通して返信しています。また、飲み会では彼らの話を聞くことに徹しています。その一方で、幹部とは、メールや会議、会食の回数を意識して増やしました。コミュニケーション量は以前の10倍です」

とりわけ、後者が大事だと小池は指摘する。「幹部の仲が悪いと部下は気を使い、パフォーマンスを発揮できなくなる」からだ。

サイバーエージェントは気風だけではなく、社員間の積極的な交流を促す“仕組み”を会社として設けている。例えば、部署ごとに交際費が支給されており、社員同士の飲み会を奨励している。若い社員と局長が、ランチを共にする機会もある。こうして、縦横の間を埋める「斜めの関係」をつくることが奨励されているのだ。

小池はその文化をより浸透させるべく、昨年10月、社内活性化を目的とした社内横断組織「アクティベーション室」をインターネット広告事業部内に立ち上げた。社員同士の交流会や毎月最終営業日に行う締め会などのイベントの企画と運営が主な業務だが、結果報告や表彰、目標設定といった定例業務を参加社員が飽きないように盛り上げるのも重要な役割になっている。

アクティベーション室のメンバーには、入社間もない社員を中心に据えている。彼らが社内文化に早く馴染めるようにする一方で、過去に活性化に携わった経験を持つベテラン社員と交流することで互いに刺激を得られるようにするためだ。

こうした施策が功を奏し、社員間のコミュニケーションは円滑になって業績は上昇。全社総会での表彰にもつながった。小池は、東京でも活性化を進めたいと考えている。

「会社の文化や空気感はとても重要です。社員が高いモチベーションをもって働ける環境ならば、事業が進化してもしっかりと適応できますから。なので、リーダーは常にこの分野に手を抜いてはいけないと強く感じています」

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文=Forbes JAPAN編集部 写真=鷲崎浩太朗

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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