「囲碁界のフェデラー」に人工知能が連勝 AlphaGoが成し遂げた快挙

[右]グーグルの人工知能「AlphaGo」と対局する囲碁棋士のイ・セドル九段 (Photo by Google via Getty Images)


囲碁の着手数は10の360乗にも上ると言われている。そのため「人工知能の研究者にとってはどうしても打ち勝ちたい挑戦」になっているとグーグルはブログで述べている。

コンピューターが複雑なゲームで人間に打ち勝ったという事実は、人工知能のソフトウェアが複雑な問題についてより柔軟に、さらには進化的に取り組むことができることを示している。

3000万通りの着手を「強化学習」した成果

DeepMindは最先端の方法をAlphaGoに備えさせた。サーチツリーと言われる従来の分析方法に加え、囲碁名人の3,000万通りの着手を分析して訓練したニューラルネットワーク(神経回路網)を組み込んだのだ。

その結果AlphaGoは2015年10月に囲碁のヨーロッパチャンピオンのファン・フイに5戦全勝した。しかしフイが世界で400~600位であるのに対し、イ九段は囲碁のレーティングで世界5位であり、世界大会の優勝回数では2位を誇る。Hassabisは彼のことを「囲碁界のロジャー・フェデラー」だという。

イ九段との対戦にあたり、AlphaGoは単に世界のトップ囲碁棋士を模倣するだけでは不十分だった。DeepMindは2015年10月から2016年3月までに、自らのニューラルネットワーク内で相当数の対局を持つようプログラミングした。そしてAlphaGoは新たな手を学ぶたびに、強化学習と言われる神経回路の調整をグーグルのクラウドプラットフォームで行った。

その結果、フイとの対戦で犯した1つの根本的なミスを、今回の対戦では犯さなかったようだ。AlphaGoは当初、イ九段のアグレッシブなアプローチに対し、より争いを避けるアプローチをとっていたが、対局が進むにつれて攻めの姿勢に転じていった。

勝負がつくと、満員のプレスルームには驚きが走った。人間の直観が極めて重要なゲームでコンピューターが勝ったのだ。興味深いことに対局中AlphaGoは「彼」と呼ばれていた。

その翌日、3月10日の対戦でAlphaGoは再びイ九段を打ち負かし、グーグル関係者はブログで次のように述べた。
「AlphaGoは次々と巧みな手を繰り出し、プロの解説者たちを唸らせた。イ九段もAlphaGoも、2時間半にわたるゲームで持てる力を出し切った」

これでAlphaGoの二連勝となった今回の試合だが、人工知能が人間に対し完全勝利を宣言するためには、あと一試合、土曜日に開催されるゲームで「彼」が勝つ必要がある。

編集=上田裕資

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