東京大学大学院教授 伊藤元重氏(写真=藤井さおり)

今年に入り、世界的な景気減速懸念が高まる中、日本に求められる政策とは何か? マイナス金利の効果はあるのか? 経済財政諮問会議の民間議員も務める伊藤元重・東京大学大学院教授に伺った。(聞き手:Forbes JAPAN副編集長/WEB編集長 谷本有香)

谷本有香(以下、谷本):2016年の年明けから、世界の株式市場は大荒れ、世界経済の減速感が強く意識されました。恐らく昨年と今年でファンダメンダルズ*は大きく変わってないはずですが、今年になって具体的に何が変わったのでしょうか。*経済の基礎的条件

伊藤元重(以下、伊藤):まずファンダメンタルズな部分を確認しておくと、いま、世界では二つの問題が同時並行的に起こっています。一つは、新興国の問題ですね。この10年、15年新興国に流れ込んでいたお金が、過剰債務を起こして逆流している。

もう一つは先進国が構造的な不況に陥っていること。先進国の構造的な不況の背景はいくつかありますが、一番大きな問題は先進国が一斉に少子高齢化に直面していることです。日本が一番わかりやすい例ですが、高齢化が進み、景気刺激をしても消費が増えず、投資もうまく回らなくなってしまっている。

少子高齢化に加えて、日本はバブルの崩壊、アメリカはリーマンショック、ヨーロッパも同時期からの資産価格の下落、その下落が想定以上に長引いています。そのため、旧来のやり方よりも相当踏み込んだ金融緩和に行かざるを得ない状況です。

日本はすでに、2013年に黒田東彦総裁が量的緩和を行い、相当踏み込みました。長期国債の大量に買い上げなんて、初めてでした。いわば禁じ手。それほど、構造的不況が大きいということなのです。

こういった新興国と先進国の問題は昨年から変わっていませんし、この状況はしばらく続くでしょう。

谷本:やはり今回の暴落のきっかけは中国だったのでしょうか?

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Forbes JAPAN副編集長/WEB編集長 谷本有香

伊藤:経済の均衡には二つのタイプがあり、いわゆる良い均衡と悪い均衡です。通常、中国の株が上がったら下がる、新興国にお金が行き過ぎていたら出ていくなど、良い均衡でおさまるのです。しかし、これが調整で起こる限りはいいのですが、ある時、それが悪い均衡に変わってしまう。つまり、リスクオフになってしまうわけです。そうすると、売りが売りを呼ぶ状態で、誰もリスクを取れず、悪くなるとジリ貧になってしまう。

大きく変わってきたのは、昨年夏の「チャイナショック」以降に起こるだろうと予想されていたことが、年明けから現実化してきたこと。中国はどんどん景気対策をしたために、すでに債務が過剰になっている新興国のなかで資源がらみの暴落がおきた。

当然、それに対する配当の問題などが複合的に起きてくるわけです。年末のアメリカの利上げも、いまの状況の一因ではありますが、アメリカはその前から利上げすると宣言していましたから、そこまで大きな要因ではありません。

文=吉田彩乃 編集=谷本有香

 

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