ラーソンは米ロサンゼルスのドルビー・シアターで2月28日(現地時間)に開催された授賞式の終了後、同作の主役を勝ち取るまでの経緯や、メディアとのかかわり方の難しさなどについて打ち明けた。特に重要な点は、ラーソンが男性優位の米映画業界で自身が直面した問題について述べたことだ。
オーディションでは審査員たちに何度も、「本当に素晴らしいよ、君の芝居を気に入った。でも、デニムのミニスカートをはいて、ハイヒールで出直して来てほしいんだ」と言われたことがあるという。
ラーソンはこれについて、その幻想を現実にしてあげることは断ることもできるし、実現してあげることもできるとして、「いつでも、どちらを選択するか悩まなければならなかった」「応じたこともあるけれど、ひどく嫌な気分になった」と話した。
賃金と機会に関する男女の格差は、ハリウッドでは広く知られている事実だ。2015年の調査では、2014年に公開された映画で配給収入上位100作品のうち、主演(複数主演を含む)が女性の映画はわずか21作品で、配役全体に占める女性の割合は28.1%だったことが分かっている。
配役自体が少ないことは、女優が得る報酬の頭打ちにもつながっている。大型作品の主演女優の出演料は、1作品当たり1,000~2,000万ドル(約11億2,300万~22億4,500万円)。女優が大ヒット作で主演する機会は、男優に比べて大きく制限されている。男優はこうした作品で主演が決まれば、当初の出演料を低く設定し、ヒットすれば興業収入から一定の割合で分配金を得る契約を結ぶ場合があるが、女優にはその機会がずっと少ない。
女優の役柄は大抵の場合、過度に性的特徴が強調されている。南カリフォルニア大学の最近の調査結果によると、女優たちはスクリーンに登場する場面のうち全体の28.6%で、露出の多い衣装を身に着けているという。
ラーソンは自ら経験したこの問題について、「セクシーに見えるようにデニムのミニスカートとハイヒールを身に着けてくれと言われても、私はその服装でセクシーな気分にならない。抵抗を感じるだけ」と述べる一方で、「学ぶことができた」とも語った。
「自分に自信を持ち、強くあるためにはどうすればいいかを学ぶこと、その人たちが私に何を醸し出させようとしていたのかを理解すること、それは私個人の問題だ」。そして、「私が知っている女性たち、私が共感する女性たち、複雑な女性たちを(映画の中で)代弁しようとすることが、私の使命になった」という。
予算600万ドルで制作された『ルーム』は興業収入が2, 350万ドルを超えた。フォーブスの「30アンダー30」にも選出されているラーソンは、アカデミー賞初のノミネートで主演女優賞を受賞。これまでの出演料は100万ドル代に達していないが、今回の受賞をきっかけに跳ね上がるのは確実だろう。