シンギュラリティ大学CEOが語る「未来をつくるテクノロジー」

シンギュラリティ大学のロブ・ネイルCEO(photograph by Ramin Rahimian)

人類の最も困難な課題に加速度的に進化するテクノロジーで取り組むため―。「未来に最も近い大学」を率いるロブ・ネイルCEOが未来のリーダー像を語る。[前編はこちら

米テスラモーターズのイーロン・マスク、グーグルの共同創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOらはまさに新しいタイプのリーダーだ。ステータスや自尊心など気にしない。難問解決という意義のあることに意欲を燃やし、世界に影響を与えている。

次世代リーダーの大切な特性として学ぶことと順応性を挙げたが、さらに謙虚さや忍耐力も大切だ。また、自分のビジョンを鮮やかに表現する高度なコミュニケーション能力も必要だ。人を引き込むような話法で、そのビジョンとは何か、どのように世界を変えるのかを語り、アイデアを人と共有する力だ。

AIも次世代リーダーに影響を与えるだろう。あと3~4年後には、AIアドバイザーがCEOにこう忠告するようになるだろう。「血糖値が低めだから、決断を下す前に食事を取れ」と。空腹だと手厳しい決断を性急に下しがちだからね。またCEOの決断履歴を分析し、「今回も一貫した決断を下そうじゃないか」と忠告してくれるかもしれない。

AIアドバイザーを使いこなせなければCEOが務まらない時代がくるだろう。CEOには、新テクノロジーを生活に取り込んでいける順応性が必要だ。

批判的な見方を持つことも重要だ。情報の洪水に流されないよう、何が本物かを速やかに判断する能力だ。仮想現実などの登場で、判別が困難さを増している。

われわれのプログラムには、ヒップホップアーティストのウィル・アイ・アムや俳優のアシュトン・カッチャーなど、セレブリティーの参加者もいる。21世紀 フォックスの会長も、1週間のエグゼクティブコースに参加してくれた。興味深いのは、将来大物になって世の中のためになることをするであろうスタートアッ プのCEOも、数多く受講してくれることだ。

なかでもエキサイティングなニュースが、宇宙用3Dプリンター製造ベンチャーのMade in Space(メイド・イン・スペース)だ。彼らは2010年に(起業プログラムである)「グラデュエイト・スタディーズ・プログラム(GSP)」に参加し、起業した。彼らの3Dプリンターは人類史上初めて国際宇宙ステーションに設置され、(宇宙飛行士が使うラチェットレンチなどの)部品・ツールの作成に使われている。NASAから多額の助成金をもらい、宇宙に大規模な建造物をつくる予定だ。

また、アクセラレータープログラムに参加したデンマーク系ベンチャー、Be MyEyes(ビー・マイ・アイズ)は、目の不自由な人たちを世界中のボランティアとライブビデオチャットで結ぶアプリを開発し、目の不自由な人たちの世界最大のコミュニティーとなっており、大成功を収めた〈編集部注:スクリーンを通し、ボランティアに文字通り「私の目の代わりになって(ビー・マイ・アイズ)」道順などをアドバイスしてもらう〉。

シンギュラリティ大学からそうしたベンチャーが生まれたことを誇りに思う。
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肥田美佐子 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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