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2016.02.07

「テスラと過ごした180日間」 米国人記者の実感

VanderWolf Images / Shutterstock

昨年、アメリカの消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」は、テスラモーターズの電気自動車「モデルS」を「これまでテストした中で最高の自動車」と評し、100点満点中100点を超える高得点を付けた。しかし、そのわずか数か月後に同誌はテスラを「買い推奨」リストから外して人々を驚かせた。

史上最高の評価を獲得した車が、基本的な基準を満たさないとは一体どういうことだろうか。そこで、我々は実際にモデルSを運転して独自の評価を下すことにした。現在、筆者がモデルSを購入して6ヶ月が経つ。これまでに5600マイル(約9000キロメートル)を走行したが、当初の期待と実体験との差をここで紹介しよう。

1. 中央のタッチスクリーン

モデルSを運転したことのある人の多くは、センターコンソールに搭載されたiPadのような大型タッチスクリーンこそが最高の機能だと言う。iPhoneのように画面をタッチしたりスワイプすることで電話、地図表示、サンルーフの開閉、インターネット検索、音楽の再生など、ほとんどの機能をコントロールすることができる

しかし、一部の人はタッチスクリーンの機能を過剰だと感じるようだ。また、夜間の運転では発光が運転の妨げになると感じる人も居る。ある人から「スクリーンをオフにすることはできないか」と質問されたが、薄暗くすることはできるものの完全に消すことはできない。

2. 音のしないロケットのような静粛性

テスラのスピードを評価する声は非常に多いが、それを際立たせているのが静粛性だ。自動車愛好家のドイツ人の友人は、「まるで音のしないロケットだ」と話す。モデルSは広々とした4ドアセダンで重量はフォードF-150と同じくらいだが、信号では難なくベンツやBMWを置き去りにし、高揚感を与えてくれる。

3. 航続距離に対する心配

5000ドルの頭金を支払う前に一番心配したのは、充電の不便さや、一回の充電での航続距離が240マイル(約386キロメートル)で十分なのかといったバッテリーに関する問題だ。テスラの充電は、iPhoneを充電するのと同じように計画的に行う必要がある。テスラが全米に設置した581か所のスーパーチャージャー(充電スタンド)のうち、40か所が筆者が住むカリフォルニア州にある点は非常に助かっている。

スーパーチャージャーでの充電は無料で、100%充電するのに30~40分かかる。最近、サンディエゴからサンフランシスコまでドライブした際には、タッチスクリーンに詳細なドライブ計画や、最適な充電ポイント、予想充電時間が表示された。スーパーチャージャーは駐車場、ホテル、モールなどに設置されており、軽食を取る際にも便利だ。

自宅での充電に必要な専用コンセントは550ドルほどで設置でき、一晩で充電が完了する。プラグインするのに5秒もかからず、夜間に家の電気を消すような手軽さだ。また、ハイウェイでの運転で気が付いたのは、高速運転ではバッテリーの減りが早いこと。カリフォルニアのハイウェイでは一般的な80マイル(130キロメートル弱)で走行するとバッテリーの消費が早まる。

4. アフターケア

テスラを購入する店舗とサービスを受ける場所は異なる。筆者がモデルSを購入したのはサンディエゴにあるWestfield UTCというショッピングモールで、アップルストアの向かいにある店舗だ。メンテナンスサービスは年に1回サンディエゴ中心部にある倉庫で受けることができ、費用は600ドルかかる。これまでにタイヤ空気圧の点検を受けたが、費用は無料だった。また、テスラの場合は当然ながらエンジンオイルの交換は不要だ。

5. 小さな喜び

テスラの光沢あるドアハンドルは、車に近づくと自動でスライドしてせり出し、運転を開始すると再び元に戻る。気の利いた機能で気に入っている。テスラにはエンジン点火スイッチや押しボタンがない。始動するには、ブレーキを踏みながらギアをドライブに入れる。停止した後は、車から離れると自動的に電源がオフになりドアがロックされる。

ホンダのオデッセイを運転した際、テスラの方法に慣れてエンジンを掛けたまま車から離れ、警告音が鳴ってしまったことがある。

6. 些細な不満

タッチスクリーンのBluetoothが動作せず、PCのように再起動したことが3、4回ある。このとき、ギアをパーキングに切り替えて2つのトグルボタンを30秒間押さえ、その後さらに90秒間待たなければならない。テスラは、ギアをパーキングに切り替えて操作をすることを推奨している。

また、タッチスクリーンに指紋汚れがつくとがっかりする。テスラは柔らかい布を提供してくれるが、しっかり汚れを落とすためには別の方法が必要だ。

筆者はこれまで車高の高いSUVを運転していたが、テスラのルーフ・ラインは低く傾斜しているため、乗り降りの際に頭をぶつけないよう身を屈めなければならず、慣れるまでに多少時間がかかった。

7. スタート前の冷暖房使用

テスラはスマートフォンのアプリを使って遠方からエアコンをオンにすることができ、冬場などは出発前に車内を暖めておける。

8. 車内のスペースの広さ

筆者には13歳未満の子供が3人いるが、後部座席に並んで快適に座ることができる。テスラでは、従来の車のエンジンルームが荷物スペースとなっている。トランクがフロントとリア合わせて2つあるため、子供たちの通学カバンや野球の道具などを収納するのにも十分なスペースがある。

9. 優れたデザイン

学校や自宅の近所にテスラを停めていると、周囲の注目を集める。筆者の妻は、エルメスのバッグを持って町を歩くことに例え「テスラはとても品質が高く、人々に強い印象を与える」と話している。

10. 自動運転機能

テスラを購入した際、営業コンサルタントが自動運転パッケージを勧めてくれたが、自動車の街デトロイト出身であることに誇りを持つ筆者としては、運転のスリルを手放すことができずに断った。今後、気が変わったときには、テスラは無線通信を経由してソフトウェアアップデートを行うため、3000ドルを支払えばいつでも自動運転機能を利用することができる。

自動運転オプションを申し込むと、テスラのエンジニアが自動運転ソフトウェアを配信してくれ、一晩で利用できるようになる。翌朝にはリモートで車を車庫から出すことができるということだ。

テスラに6か月間乗ってみて、コンシューマー・リポートがモデルSに最高評価を与えた理由が理解できた。社内は広々として、スピードは速く、運転は楽しく、外見も素晴らしい。

では、なぜコンシューマー・リポートはテスラを買い推奨リストから外したのだろうか。同誌は、モデルSは信頼性に課題があるとして次のように説明している。

「ドライブトレイン、動力源、充電機器、iPadのような巨大なタッチスクリーン、車体・サンルーフのきしみやガタガタ音、水漏れなどが主な問題点だ」

きしみやガタガタ音?ドライブトレイン?筆者はこれまでそうしたトラブルは経験していないが、今後直面することになるのかもしれない。これからさらに6か月間運転をしてみて、再びレビューを書いてみようと思う。

編集=上田裕資

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