業界の垣根を超え「幸せな食卓と生産者の発展」を目指す[G1 100の行動]

オイシックスの高島宏平 代表取締役社長 /photograph by Chikashi Kasai

G1サミットには1回目から参加しています。当初は、若手メンバーの1人で、30代の参加者は私とライフネット生命保険社長の岩瀬大輔さんだけでした。

「若い経営者の声を聞きたい」ということで、40代の先輩方を前に、2人で登壇して話したこともいまやいい思い出ですね。

G1サミットは最初、脳と心に刺激を受ける場でした。私が普段あまり考えていないことがテーマとなり、経験豊富な経営者たちのメンタリティーに触れることがとても刺激的でした。そんな受動的な姿勢から、徐々にG1サミットの根幹の精神「思想から行動へ」への思いを強くしていきました。

そこで実際に「行動へ」と移したのが、東日本大震災後に立ち上げた、「東の食の会」です。「東日本の食の復興と創造を長期的に促進する」「日本の食文化を育み、世界に誇れるブランドとして確立する」というミッションの社団法人です。

それ以前から、同じくG1メンバーであるカフェ・カンパニー社長の楠本修二郎さんと「食品業界がないよね」という話をしていたことがきっかけでした。日本には、農業界、レストランチェーン業界、ファストフード業界はありまがすが、それぞれ業態単位で業界がわかれており、食品業界というのはあるようでない。しかし、「食の未来」を考えた時、食の業界の垣根を超える「食品業界」はやはり必要なのです。

そんな話をしていた時に、東日本大震災が起きたので、「震災からの復興」をテーマにしてはじめようと、立ち上げました。

この団体は、私と楠本さんの共同代表理事、理事のETIC.代表理事の宮城治男さん、四縁社長の立花貴さんなど、その他、発起人まで含めると、多くのG1メンバーとともに活動しています。

私の本業は、有機野菜など安心安全な食品宅配サービス会社・オイシックスの経営です。会社経営をしていく中で、私の役割は、世の中にとって「いいこと」を持続的かつ大規模に行っていくことだと考えています。「東の食の会」も、理事を務めている「TABLE FOR TWO」という途上国での給食支援のプログラムも、そうした考えに基づいてスタートさせたプロジェクトと言えます。これらの活動を今後も発展させていくためには、オイシックスの存在感をもっと大きくしていかなくてはなりません。

オイシックスが大きくなればなるほど幸せな食卓が増え、同時に日々努力をしている生産者も経済的に豊かになっていく。そんな光景を想像しながら、社会をよくするために「食」の領域で何ができるのかを考え、今後も引き続き実行していくつもりです。

高島宏平◎1973年生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、マッキンゼー入社。2000年6月、オイシックスを設立し、同社代表取締役に就任。13年に東証マザーズに上場。

G1「100の行動」とは

「G1サミット」の代表理事であり、グロービス経営大学院学長の堀義人が発起人となり、「G1政策研究所」のメンバーと議論しながら、日本のビジョンを「100の行動計画」として描くプロジェクト。どんな会社でもやるべきことを10やれば再生できる。閉塞感のあるこの国も100ぐらいやれば明るい未来が開けるだろうと、東日本大震災直後より開始した。現在、100の行動すべてが公表されている。

野口孝行 = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.19 2016年2月号(2015/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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