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2016.02.11

日本の技術は難題解決の切り札

Bobo Ling / Shutterstock

異常気象や食糧危機、サイバー攻撃、金融市場の不安定化、頻発する国家間紛争……。国際社会が抱える問題は、複雑に絡み合い、相互かつ密接に関連している。こうした課題に、世界はどう対峙するのか。

日本で「水危機」と言われても、ピンと来ない人が多いだろう。日本は「水資源国」と言われるし、国土交通省は「日本は年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均の約2倍に相当する」という。それに、国土の7割を占める森林が、豊かな水を蓄えているはずだ。

だが、世界は「水危機」に直面しているし、日本とて無縁なわけではない。中国やインドといった新興国で、人口爆発が起きている。急増する人口に対応できるだけの食糧を生産するためには、水が必要だ。そのため今後、淡水はますます希少な自然資源となる。希少な財は、価値が高く、ゆえに価格高騰につながる。すでに海外ではCO2や水のプライシング(価格設定)と新しいバリューチェーン構築がはじまっている。

これは対岸の問題ではない。日本は多くの食糧を海外からの輸入に頼っているからだ。淡水価格が高騰するとどうなるか。たとえば、牛を一頭飼育するために必要な水は約2000リットル。日本は国内で消費される牛肉の約60%を輸入に頼っている。その輸入牛肉に飼育で使われた水の価格が付加されたとしたら、輸入牛肉の値段は一気に跳ね上がる。

世界的に水のプライシングがはじまれば、輸入食料品の価格が高騰するだろう。日本の食糧自給率が今のままなら、日本が食糧難に陥りかねない。

グローバル化した社会では、あるひとつの問題が国境や領域を超えて世界中に波及していく。その速さや拡がり方は、もはや経験知、人智、想像力を超えている。どこかの国や地域で発生した問題がさまざまな社会課題と複雑に絡み合い、ドミノ倒しのように1カ国、1地域、1個人に直接・間接、正・負の影響を与えている。国や個人の取り組みが自己完結的に解決できるほど、現代社会は単純ではない。

日本が世界と繋がっていることのリスク

毎年冬、スイスのダボスで「世界経済フォーラム」の年次総会「ダボス会議」が開かれる。ダボス会議では過去10年にわたり、経済、科学技術、地政学、自然災害、環境、紛争といった分野のリスクについて、研究が続けられてきた。脅威の全体像を把握しようとする試みや、個々のリスクを掘り下げて、そこから得られる共有知を抽出しようという取り組みだ。数ある事象の中から「発生の可能性が高いリスク」と「発生した場合に影響が大きいリスク」の上位10項目を洗い出す(以下)。

<発生する可能性が高いリスク>
1. 地域に重要な結果をもたらす国家間紛争
2. 異常気象
3. 国家統治の失敗
4. 国家の崩壊または危機
5. 高度の構造的失業または過少雇用

<発生した場合に影響が起きいリスク>
1. 水危機
2. 感染症疾患の迅速かつ広範囲にわたる蔓延
3. 大量破壊兵器
4. 地域に重要な結果をもたらす国家間紛争
5. 気候変動への適応失敗
次ページ > 顕在化した事象が次なるリスクを生む

蛭間芳樹 = 解説 山川徹 = 構成

この記事は 「Forbes JAPAN No.19 2016年2月号(2015/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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