そんな状況下でIPOを予定していたのがオンライン金融の米Elevate Creditだ。Elevate社は、21日に一株20ドルから22ドルの仮条件で360万株を公開、7600万ドル規模(約90億円)のIPOを実施し、翌朝のニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引開始のベルを鳴らすはずだった。
しかし、20日の株式市場は荒れ相場で各種指数も大幅に下落、2016年のIPO第一号という栄誉を手にするはずだった同社は、新規株式公開を先送りした。
Elevate社CEO、ケン・リース氏は、この事態について次のようなステートメントを発表した。「現在の市場で新規公開株の売り出し価格を設定するのは困難です。市場が持ち直すのを待ちたいと考えます」
Elevate社が、そもそもなぜ、このタイミングでIPOを計画したのかも疑問だ。貸し手と借り手をつなぐ、P2PLプラットフォームのLending ClubやOnDeck社も、2014年のIPO実施当初から、株価はそれぞれ70%近い大暴落を見せている。
現時点で、米IPO市場は昨年と同様のパターンを辿る色合いを深めつつある。米IPO専門調査会社ルネッサンス・キャピタルによると、昨年は170社がIPOを実施し総額300億ドル(約3兆5500億円)を資金調達したが、これは前年比39%減、資金調達額は65%減だったとしている。調達額の大幅な減少は、2014年には中国アリババが220億ドルという巨額の資金をIPO調達したことに起因しているが、いずれにせよ、昨年のIPO市場は2009年以来の低調だった。
フィンテック企業Think Financeから独立し、2014年に設立されたElevate社は、セコイア・キャピタル、英テクノロジー・クロスオーバー・ベンチャーズといった大手VCの出資を受け、2015年の第3四半期までに3億ドルの売上を計上した。当面、投資家は同社のIPOを待つことになるが、Elevate社としては、公開、非公開のどちらが同社にとってより有利に働き、多くの資金をもたらすかが考えどころだ。