image by Ray Mattison / courtesy of Charles Bombardier

カナダのボンバルディア社創業者の孫で、工業デザイナーのチャールズ・ボンバルディア氏は、マッハ10の超音速で飛行する、夢のコンセプト機「Skreemr」で世界的センセーションを巻き起こした。

Skreemrの近未来的コンセプトは大いに魅力的だが、実現化に向けてはいくつか課題がある。機体が生む衝撃波と、急激な加速で発生する熱をどう軽減するかだ。ボンバルディア氏自身が、先日の取材でも告白している。「機体に発生する熱、圧力、構造的ストレスに耐え得る素材の開発については、未だ確信が持てていません」

だが、Skreemrの構想が公開されて間もなく、二つの課題をクリア―する解決策が浮上した。

「アメリカ国防総省の機関、RIACの元職員で、エンジニアリングに特化したサービスを提供するWyle社のエンジニア、ジョセフ・ヘーゼルタイン氏から、ある技術の応用を検討してほしいと、連絡をもらったのです」とボンバルディア氏は、その経緯を明かした。その技術とは空気力学において「逆噴流のロング・ぺネトレーション・モード(LPM:long penetration mode)」と呼ばれるテクノロジーだという。

そして誕生したのが、全く新しい超音速コンセプト機「Antipode」のデザインだ。「Skreemr」の2倍、「コンコルド」の12倍を超す速度、マッハ24が達成可能とされる、このラグジュアリーな商業用ジェット機は、最大で10人の乗員を乗せ、2万キロの距離を1時間以内で飛ぶことが出来る。

「地球の真反対(antipode)へ、最速で到達する飛行機を考案したかった」とボンバルディア氏は述べた。

マグネティック・レールガンシステムを利用して機体を発射する「Skreemr」とは異なり、「Lunatic Koncepts(正気じゃないコンセプト)」の設立者でムンバイのプロダクトデザイナー、アビシェク・ロイ氏とのコラボレーションで着想を得た「Antipode」は、機体の翼に搭載したロケットブースターで離陸する。

加速器の推進力で高度4万フィート(約1万2200メートル)まで上昇し、マッハ5の音速に到達した時点でブースターは機体本体から切り離され、地上に戻る(このブースターは、ジェフ・ベソスが設立した米民間航空宇宙企業ブルーオリジンが開発し、昨年初めて垂直状態での着陸に成功したブースターに似たものだという)。

「その後、上空では機体に搭載されたコンピューターがスクラムジェットエンジン(Supersonic Combustion Ramjet Engine/超音速燃焼ラムジェットエンジン)を点火させ、速度は一気にマッハ24に到達します」とボンバルディア氏は説明した。

機体先端部のノズルを通して超音速の大気の流れを導入し、ジェット気流を逆流させることでLPMが誘発され、暖められた空気が機体表面の温度を下げ、音速の壁を超えることで生じる凄まじいノイズと衝撃波も軽減する効果を得られる。

Antipodeの翼は、エンジン無しで機体を滑空させ、長さ6千フィート(1800メートル)の滑走路でも着陸可能な揚力を備えている。「一度目の着陸に失敗した場合も、非常用コンパクトロケットブースターで逆噴射し、減速することが可能です」と彼は言う。

編集=上田裕資

 

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