中国広核集団(CGN)の計画では2020年までに沖合で使える組み立て式の多目的原子炉を建設し、さまざまな用途に活用する。第一基の建設は来年始まると見込まれる。
CGNの原子炉ACPR50Sの設計は、革新的なエネルギー技術を発展させる中国の国家戦略の一部として中国発展改革委員会に承認されており、今年が初年度となる第十三次五カ年計画に盛り込まれた。中国は今後10年間で100基以上の原子炉設置を計画している。
中国政府は1000億ドル(約11兆7000億円)を投じ、2030年までに年間7基の原子炉を建設する計画。2050年には中国には400基の原子炉が建設され、発電容量は350GWを超える見込みで、原発への投資は計1兆ドルを超えると試算されている。
中国は様々なタイプの原子炉の建設をテストしており、この海に浮かぶタイプもその一つだ。中国は世界最大の原発エネルギー技術輸出国になるという目標に向け、小型組立型原子炉、高速炉、熔融塩炉、軽水炉などあらゆる規模、タイプの市場ニーズに対応すべく、高レベルかつ多様な技術を獲得しようとしている。
この水上原発に使われる200MWの小型原子炉は電気や熱を供給するために開発された。水上原発は島や沿岸部での原油やガスの採掘のサポートや、短期間で大量の電力を必要とする産業パークへの電力供給、自然災害発生時の緊急電力の供給といった用途が想定されている。
小型組立式の水上原子炉構想にはいくつかのメリットがある。電力を特定の目的のために現場に運ぶことも、そこからさらに違う場所に移動するも可能で、運用上の利点は大きい。工場や造船所などでも建設できるため、効率性が高くコストを軽減できる。
また、環境への負荷も小さいと言われている。冷却には海水が利用可能で、立地の選定も複雑ではない。緊急避難計画もわずらわしさが少なく、恒久的なプランの必要もない。
ただし、沿岸の環境は十分に考慮する必要がある。放射線物質が海上に流出しないように万全の対策を取らなければならない。CGNは小型の原子炉の開発は大型のプラントを補完し、エネルギーの選択肢に多様性をもたらすと主張している。
海上原子炉はこれが初めてではない。米海軍はかなり大きい原子炉を積んだ原子力潜水艦や空母を多く保有している。もっともそれらの原子力は船舶の動力を生産するためのもので、ほかで使う電気を生産するわけではない。
ロシアも水上原子力発電所アカデミック・ロモノーソフの建設を進めており、チュクチ自治管区で2017年の稼働を目指している。原子力発電の分野では今後数十年でさらに多様化が進むだろう。