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2016.01.17

オバマやヒラリーが繰り返す「銃規制に関する誤った主張」

Photo by Melina Mara/The Washington Post via Getty Images

政治家は自らが選択した物語を続けていくため、一面的な話の進め方をするものだ。しかし、オバマ大統領とヒラリー・クリントン氏の銃産業に対する嘘八百を放っておいてよいものだろうか。

1月7日、オバマ大統領はニューヨークタイムズに寄稿し、次のように述べた。
「銃メーカーらは事実上、法の適用を免れるということを議会は認めた。つまり、死をもたらす製品を売っているのに、その責任を問われることはほとんどない。もし、車の座席の欠陥に関して、このような免責が認められるなら、親としては受け入れがたいだろう。それなのに、なぜ、毎年これ程多くの子供を殺している銃を、野放しにしなければならないのか」

また、ヒラリー・クリントン氏は民主党の討論会で、「米国の銃メーカーは、この国ですべての責任から除外されている唯一の産業だ。彼らは売るべきでない人間に銃を売っていることを知っているが、告訴されることはない。何の責任もないのだ」と語った。

ヒラリーは10日のCBSニュース「フェイス・ザ・ネイション」でもこの主張を繰り返した。「銃メーカーは法的な責任を気にせずに何でもできるという白紙委任状を与えられている我が国唯一の産業だ」と。

オバマ大統領とクリントン氏は2005年に議会を通過、署名された「武器売買の法的保護に関する法律」(PLCAA)について言及している。同法は銃メーカーに対する集団訴訟を禁じているが、犯罪的行為に関して銃メーカーは民事的責任を免れないことを定めている。

昨年末、ラスベガスの繁華街で、車を歩道で暴走させて死傷者を出した事件があったが、犯人の車の製造元を訴えても意味がない。銃メーカーに対する集団訴訟はこれと同じようなものだ。ラスベガスの事件で、車のメーカーが罪に問われないように、法に則って売られた短銃コルトが後に犯罪に使われたといって、銃メーカーに責任はないのだ。

こういった訴訟は政治的な動機に基づいており、PLCAAがなかった頃は、問題の解決には政治的な力が必要だった。法律を読めば誰でもわかるが、PLCAAは銃メーカーが民事責任を免れるのは、「当事者または第三者が、承認された製品を、犯罪的にまたは不法に誤って使用した結果」である場合にすぎない。

PLCAAはとりわけ、「メーカーまたは販売者が意図的に誤った」ことを陳述した場合、または火器の「販売や譲渡の正当性に関連する重大事実に関して口頭または書面で虚偽の陳述を行った人物を、援助、扇動、または共謀」した場合は、免責されないと強調している。

PLCAAはさらに「承認された商品の実際の買い手が、火器または弾薬を、所有または譲渡を受けることが禁止されていることを知りながら、または信じるに足るしかるべき根拠を持っていながら、それでも製造者または販売者が、いかなる人物とであれ援助、扇動、共謀して、承認された製品を販売または譲渡した場合」は、保護の対象としていない。

この他、「製品の購入に関連する契約、補償への違反」「製品の構造、製造上の欠陥に直接起因する死亡、ケガ、器物棄損」などの場合、PLCAAは銃メーカーを保護しない。

銃メーカーはクリントン氏が言うような民事訴訟について白紙委任状など与えられていない。欠陥製品を作ったり、法を犯したりした他の製造業と同様、告訴され得るのだ。

しかしながら、オバマ大統領やクリントン氏が、「銃メーカーは法的に民事訴訟を免れている」と繰り返し主張するのを、多くのメディアはうなずいて聞いているばかりだ。PLCAAは理解するのが難しいのだろうか。オバマ大統領やクリントン氏は弁護士なので、法律に書いてあることが理解できないなどとは恥ずかしくて言えないのだろうか。政治というものは多くの点で不透明なものだが、この件については印刷された法律用語と同じくらい理解しにくい話である。

編集=加藤雅之

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