ビジネス

2016.01.16

インドの財閥、フェラーリ・マセラティを手がける伊ピニンファリーナを買収

Mint / gettyimages

自動車製造を中核事業とするインドのマヒンドラグループが、イタリアの老舗デザイン会社ピニンファリーナを買収したのは昨年12月半ばのこと。そうして新たに獲得したデザインの強みを活かすことで、同グループはヨーロッパやアメリカの新たな市場に挑もうとしている。それも自動車に留まることなく、幅広い分野での工業デザインに打って出ようとしているのだ。

買収したピニンファリーナ社については、グループ企業でITサービスを展開する「テックマヒンドラ」が60%を、自動車製造を手がける「マヒンドラ&マヒンドラ」が40%を所有するかたちになるとみられる。マヒンドラは自動車ビジネスの拡大を進めているところで、韓国の双竜自動車や、リーバ・エレクトリック・ビークルズ社をすでに取得しており、大人気となったSUVのボレロや、より値の張る四輪駆動車のXUV500などをインド国内で販売している。

そして今回ピニンファリーナ社を傘下に得たことで、デザイン関係全般を一手に取り扱うワンストップサービスが実現するのだと、テックマヒンドラ社のマネージングディレクター兼CEOのCP・グルナニは電話インタビューで語ってくれた。

ピニンファリーナ社は1930年代以来、フェラーリ、アルファロメオ、マセラティなどイタリアのスポーツカーのデザインを手がけて成功と名声を手中に収めた。フェラーリ250GT、フェラーリ・テスタロッサ、アルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダーなどが代表作だが、フランスのプジョーなど大衆車のデザインにも関わっている。

そんなピニンファリーナ社が失速し負債を抱えることになったきっかけは、自動車デザインの大きなしくみが変わったことだ。メーカー各社が基本プラットフォームの数を絞ってそれを幅広い車種に適用するようになったことで、先に列挙したようなニッチな車種向けのデザインを得意とする同社の出番も少なくなってしまったのだ。

ピニンファリーナ社のビジネスは65%がヨーロッパ向けのものとなっている。テックマヒンドラ社がそこに介在することで、アジアやアメリカへも取引先を広げられるという狙いも今回の買収にはある。

ちなみにピニンファリーナ社が手がけてきたのは自動車のデザインだけではない。「商品パッケージや建造物から、ハンドバッグ、衣料品、ノートブック、さらにハイエンドなモーターサイクルやトラクターに至るまで、自動車以外でもピニンファリーナのデザインを見かける機会は数多くある。彼らのデザインセンスと我々のIT関連技術が組み合わさることで、まさしくワンストップなサービスが実現します。彼らには稀有なスキルがあり、我々はマーケットを深く理解しています。両社のクライアントがひとつ屋根の下で至れり尽くせりのサービスを受けられるようになるという、これは結婚にたとえれば、これ以上ない良縁ではないかと思っております」と、CP・グルナニは語った。

自動車業界における技術関係のアウトソーシングの規模はいまだに巨大で、グルナニによればそれは年間100億ドルものマーケットであり、しかも年率8%ほどの成長を続けているのだという。自動車の販売でヨーロッパやアメリカに攻勢をかけようというまでの意図はマヒンドラグループにはなさそうだが、ピニンファリーナ社を取り込めることの意義は、自動車製造事業においてもやはり大きい。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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