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2016.01.09

通貨の世界に大革命をもたらす「正当なる異端児」

平岩 享 = 写真

村口和孝(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ)>> 朝山貴生(テックビューロ)

私がこの起業家に投資した理由
朝山貴生が創業したテックビューロは、暗号通貨サービスの開発・提供を行う企業。2014年6月に先端技術を開発するラボ企業として設立後、15年3月の1億円の資金調達と同時に、ビットコインとモナーコインを取り扱う手数料ゼロの暗号通貨取引所「Zaif Exchange(ザイフ・エクスチェンジ)」をリリースし、以降、「ザイフ」というブランドで暗号通貨関連サービスの開発と提供をしている。10月には金融機関やシステムインテグレータ向けに、暗号通貨技術を発展させた「プライベート・ブロックチェーン」構築プラットフォーム「mijin」の提供を開始した。

朝山に投資をしたのが、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝ジェネラルパートナー。村口は早くから独立系ベンチャーキャピタルの代表として実績を積み重ね、DeNAなどへの投資で知られる、日本を代表するベンチャーキャピタリストだ。

朝山:村口さんとの出会いは共通の知人との食事会。そこから複数回お会いして話をし、投資をしていただきました。

村口:私の投資方針は、パラダイム・シフトが起きるだろう領域でチェンジメーカーになれる起業家か、どうか。開拓地と未開拓地との境界線を意味する“フロンティア”にいて、開拓に挑む起業家を投資支援することです。こうした起業家に投資をすることこそ、リスクをとることを生業とするベンチャーキャピタリストが本領を発揮できることだと思いますから。朝山さんに投資をしたのは、20年近く前からパラダイム・シフトが起きるだろうと言い続けてきた「通貨」の領域で、いままさにブロックチェーン技術による暗号通貨が大きな役割を果たそうとしており、その中でも技術力、サービス力があり、グローバルな暗号通貨サービス領域で重要な役割を果たす—と思ったからです。

朝山:村口さんは先端的なテクノロジーに対して、「ビジョン」を目利きのポイントにして投資をしていただき、とても感謝しています。
我々のような新しいテクノロジーでの挑戦は、投資家の方々に理解されにくい。技術領域に強いという投資家の方々からも「技術査定できない」と言われたぐらいですから。

村口:朝山さんの起業家として優れている点は、暗号通貨の分野に必要不可欠なコンピュータ・サイエンスの深い知識をベースにしながら、ITのイノベーションについてもよく認識されているところですね。不思議と朝山さんの周りには“天才エンジニア”が集まって、彼らとうまくコミュニケーションをとり、新領域を開拓している。私は成功する起業家は、未来に対して真面目であることだと思っています。未来の顧客に対して、商品・サービスを提供することに真面目であるか、どうか。朝山さんは未来に対して真面目な起業家ですね。

朝山:今後は、ブロックチェーン技術を誰もが簡単に利用できる汎用プラットフォーム「mijin」をオープンソースプロジェクトとして公開し世界を狙っていきたいと思っています。こうしたプライベート・ブロックチェーンは、専門家の中でさえその有効性にまだ理解が浸透していない新しい技術です。そんななか我々は、既に金融機関で実働できるレベルまで品質を高めており、この分野で世界ナンバー1をとりたいと思います。

村口:暗号通貨は世界に大変革をもたらす、ど真ん中のテーマ。海外のビジネスモデルや技術を持ってくる“タイムマシーン”では絶対に変革者になれません。なぜなら、私たちがこれまで見てきたパラダイム・チェンジャーは「健全なる破壊者」ですから。朝山さんには「正当なる異端児」として、世界を変える活躍をしてほしいですね。

むらぐち・かずたか◎1958年、徳島県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。野村證券系VC、北海道ジャフコ出向。東京投資本部転勤を経て、独立。98年、日本テクノロジーベンチャーパートナーズを設立。主な投資成功例に、インフォテリア、DeNA、イメージワンなどがある。

あさやま・たかお◎1975年、兵庫県生まれ。関西学院大学商学部卒業。在学時の1996年に広告システムで起業し1997年にはシリコンバレーに渡米。クレジットカード決済やリッチメディア広告を提供。帰国後はソーシャル広告やネイティブ広告サービスを手がけ、現在に至る。

構成=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.18 2016年1月号(2015/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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