就職面接で強い印象を残すには

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喉から手が出るほどほしかった仕事の面接で次点に終わったら、その時、あなたは目が覚めるだろう。面接者の質問に従順な子羊のように答えているだけでは、仕事は手に入らないと気づくだろう。

質問にことごとく「正しく」答えて、あとは黙って次の質問を待っているようでは、仕事のオファーは来ない。

面接者の注意を引くには、もっと積極的にならねばならない。とりわけ、面接者があなたの上司になる人物なら。

単純な質疑応答よりも高いレベルへと、面接を引き上げる必要がある。別の次元へと会話を移行させ、仕事の要点について――その仕事の現在うまくいっていない点について――話すのだ。

従順モードから抜け出し、コンサルタントが新たな顧客に接する時のように話をしなければならない。

面接者が直面している問題について話し、面接者が抱えている頭の痛い問題と同じような問題を解決した経験について(詳しくなりすぎないように)話そう。

どうすれば面接者が抱えている問題がわかるだろう? 面接日の前に、こう自問してみよう。「この仕事に就いている人が、解決したり、軽減したりする重要な問題とはなんだろう?」

どんな仕事にも重要な問題がつきものだ。消費者が競合他社から購入しないようにしなければならないかもしれないし、受注処理システムの欠陥を見つけて修復しなければならないかもしれない。

その仕事の担当者が解決しなければならない問題は何なのか、面接に行く前に見当をつけておく必要がある。さもないと、またもや弱々しくて従順な応募者に成り下がって、面接で強い印象を残す機会を失ってしまうだろう。

ジョエレンは、今日就職面接に行く。準備は整っている。その仕事の担当者が解決しなければならない問題は何なのか、ちゃんと見当をつけてきた。

ジョエレンが応募するポジションは、仕事の半分が採用で、残りの半分はエンプロイー・リレーションズ、つまり、アングリー・チョコレートという、ジョエレンが応募する高級チョコレート製造会社の社員の間で持ち上がる問題に耳を傾けて問題を解決する仕事だ。

アングリー・チョコレートでのポジションについて考えてみたジョエレンは、この会社は社内に採用担当者を抱えて、しかるべき人材を探して面接することに半日を割かせなければ目標が達成できないくらいに、人材を必要としているのだと理解した。

アングリー・チョコレートは、採用担当というポジションを、今初めて作ろうとしているのだろうか、それとも誰かが辞めたのだろうか? それについては、ジョエレンにはまだわからない。このポジションが新たに作られたものなのか、それともすでに存在していたのか、面接の場で確かめる必要がある。

どちらにしても、準備は整った。ジョエレンの上司となるアングリー・チョコレートの人事部長には、解決しなければならない問題があることを、ジョエレンは知っている。

もしアングリー・チョコレートが、1日の半分を採用の仕事に充てる採用担当者を社内に抱えなくても素晴らしい人材を採用できるなら、そうしただろう。週に20時間を採用に割く人間が人事部にいなかったら、アングリー・チョコレートが人材を充分に確保できないのは明らかだ。

ジョエレンは、採用に関する頭の痛い問題について話す用意ができている。と言っても、他社でどんなに素晴らしい人材を採用してきたかを語るつもりはない。

このポジションに応募する他の応募者が、これまでに人材採用の分野でどれほどの成功を収めてきたか、長々と話すであろうことを、ジョエレンは知っている。アングリー・チョコレートの人事部長、マーティンは、礼儀正しく耳を傾けるだろうが、応募者が長話を続けるたびに、「この人物は私のために、うちの会社でも、同様の結果を出してくれるだろうか? 出してくれるか、どうすればわかるだろう?」と考えるだろう。

応募者が、マーティンが抱える問題を理解して、その理解に基づいて的を射た質問をすれば、マーティンは、その応募者に問題を理解してもらえたと感じるだろう。

ジョエレンは、自分の話をしてマーティンを退屈させるのではなく、マーティンが抱える問題についてできるだけ詳しく知りたいと考える。そうすれば、ジョエレンとマーティンの双方にとってより興味深い面接になるだろうし、ジョエレンは役に立つ情報をより多く手に入れることができる。

ジョエレンが応募するポジションでは、採用は仕事の半分でしかない。そのポジションに就く社員は残りの半分の時間を、他の社員と話をして、彼らが抱えている問題に耳を傾け、問題を解決することに充てる。「この仕事については、どうだろう?」とジョエレンは考える。

アングリー・チョコレートは成長を続けている。150人の社員の声を聴くために、アングリー・チョコレートが人事担当者を置いたのは素晴らしいことだ。社員の声に積極的に耳を傾けて問題を解決しようとする人がいなかった時、アングリー・チョコレートはどんな困難に直面したのだろう?

そうした類いの困難も、ジョエレンは知っている。社員が不満で一杯で、企業文化が萎れる時に何が起きるか、ジョエレンにはわかっている。そうなったら、社員が次々に辞め、残った社員も仕事に身が入らなくなる。社内には緊張感が漂う。

ジョエレン自身、そんな状況を目にしたり経験したりしたことがあった。採用にまつわる問題だけでなく、エンプロイー・リレーションズについても、ジョエレンはマーティンと話し合いたくてたまらない。

以下は、面接でのジョエレンとマーティンの会話である。

マーティン:で、ジョエレン、このポジションはちょっと特殊なんですよ。1日の半分は採用に従事し、残りの半分はエンプロイー・リレーションズに割いてもらうことになります。この二つの仕事をどのように組み合わせるか、すでに考えていただいていると思います。あなたの考えを聞かせていただけますか?

ジョエレン:もちろんです。そのことについては考えてきました。御社よりも規模の小さな企業の人事部の仕事に、とても似ていると思います。人材採用に頻繁に時間を費やしながら、社員の話にも四六時中耳を傾けなければなりません。自分の机で一人きりでいる時間なんてありません。自分の机から離れて他の社員と話をしているか、会議室で応募者に面接しているか、電話で応募者と話をしているか、大学などの採用パートナーと打ち合わせをしているかです。このことについて、一つうかがってもよろしいですか?

マーティン: もちろんどうぞ。

ジョエレン:ほしい人材が見つからなければ、当然会社は不利益を蒙ります。必要な従業員が欠けていれば、新製品を開発したり、出荷したり、お客様に対応したりといったことが、思うようにできません。

エンプロイー・リレーションズにおいては、社員の期待に応えられない企業文化がもたらす損失は、それほど明確には表れません。従業員150人規模の企業の多くは、エンプロイー・リレーションズだけに半日でさえ時間を割くことのできる職務を設けていません。御社は、なぜ新たに採用する社員に、勤務時間の半分を従業員の問題に注力させることにされたのですか?

マーティン:いい質問ですね。じつは去年の今頃、組織を再編成したのですが、正直言って、やり方がややまずかったのです。一人も解雇はしなかったのですが、再編のやり方や、意思の疎通の取り方について、みんなが満足できたというわけではありませんでした。

その時、社員の動きをよく見て、その声にじっくり耳を傾ける人間が必要だと私は考え、採用とエンプロイー・リレーションズの仕事に半々に時間を割く、このポジションを作り出したのです。このポジションにはミランダという女性が就いていたのですが、女優になる夢を追って、ニューヨーク市へ引っ越すことになったのです。

ジョエレン:それはすごい挑戦ですね。でしたら、エンプロイー・リレーションズの優先課題は何でしょうか?

マーティン:弊社はどんどん成長しており、さまざまな問題が持ちあがりかねません。そうした問題に、直ちに耳を傾ける必要があります。各部署の部門長もベストを尽くしていますが、みんながそれぞれ違った仕事で駆けずりまわっています。ですから、社員がいつでも相談できるエンプロイー・リレーションズ担当者がいることに、多大なメリットがあるのです。

ジョエレン:ミランダが頻繁に耳にしていた問題には、おもにどういったものがありましたか?

ジョエレンは、マーティンが抱えている問題について、まだ話し終えたわけではない。終えたどころか、始めたばかりだ。

従業員関連のどんな問題について取り組んでもらいたいかをマーティンが説明すると、ジョエレンはそのことに関して、さらに問題を探るべく質問を投げかける。

ジョエレンは、彼女自身が挙げてきた実績を長々と話すことに貴重な面接時間を費やしたいとは思わない。そんなことをしても、彼女の実績が、アングリー・チョコレートが直面している特定の状況に結びつくとマーティンが判断しないかぎり、ほとんど印象を残さないだろう。

ジョエレンは面接の間中、マーティンに黙って話を聞いてもらいたいとは思わない。そうではなく、マーティンに話をしてもらいたいのだ。彼が抱えている問題について冷静に話をしてもらい、彼の問題を理解して、共感しながら話を聞く相手が部屋にいることを感じてもらいたい。その相手とは、もちろんジョエレンだ。

ジョエレンは、マーティンとブレーンストーミングがしたい。だから彼の話に喜んで耳を傾け、適宜明快な質問を投げかける。

自分の素晴らしさを話すぞと意気込んで面接に臨んでも仕事は手に入らないことを、ジョエレンはとっくの昔に学んだ。

マーティンの悩みに耳を傾けて、その問題に関して意見を述べる時間が長ければ長いほど、面接は成功だ。採用されてもされなくても(そもそも、その仕事に就きたいかどうか決めることができるほどの情報を、まだ手に入れていない)、ジョエレンは面接に臨むたびに面接がうまくなっていく。

編集 = Forbes JAPAN編集部

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