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2015.12.19

米国・内国歳入庁にパスポート取り消しの権限、法成立

alexmillos / Shutterstock

オバマ大統領が向こう5年間のインフラ歳出法案に署名したことを受け、内国歳入法に新たに7345条が加えられた。

これは「H.R. 22 – Fixing America’s Surface Transportation Act, the (FAST法)」の一部として成立したもので、パスポートに関する条項はこれにより法制化された。

「なぜ内国歳入法にパスポートに関する条項が含まれるのか?」と疑問に思うかも知れない。今回同法に加えられた7345条のタイトルは「一定の税滞納がある場合のパスポート取り消しまたは発行拒否」。オリジナルのアイデアは米国会計検査院が税の徴収のためにパスポート発行を利用する可能性について報告した2012年にさかのぼる。


当時は物議を醸したが、今回は高速道路に関する大規模な歳出法案に潜り込み、成立にこぎ着けた。7345条については法案の1,113ページから、共同説明書では38ページから記載がある。同法によると、内国歳入庁(IRS)が「返済義務を怠っている総額5万ドル(約605万円)超の未払い税がある」と証明した場合、国務省は全ての該当者についてパスポートの取り消し、発行拒否、または制限をすることができるとしている。事務的な詳細に関しては情報が乏しい。新たなパスポート発行や更新が行われないという可能性のほか、国務省が既存のパスポートを無効にすることもあり得る。

国務省はどうやらIRSからの通知を受けて動くらしく、そのことである程度の人々が動揺している。われわれは、パスポートは海外旅行の際に用いるものと考えているが、2016年には米国内の旅行の際にもパスポートが必要になる。このことは、IRSの支配力をより強力なものとしかねない。関連する納税者のリストはIRSによってまとめられ、連邦税の未払い分5万ドルをしきい値として使うことになる。しかし、5万ドルには加算税や金利も含まれる。誰もが知っているように、加算税や金利は急速に膨れ上がっていく。

注意すべき点として、提案されている法案についてIRSに行政上の異議を申し立てている、もしくは法廷で争っている場合にはまだ税滞納ではないため、対象となることはない。また、例外として国務省に対して緊急または人道的な理由によるパスポートの発行を認めている。しかし、その方法や特別発行までの時間などについては明らかになっていない。このほか、両者の署名がある分納の合意などに基づき、適切に未納分を納付している場合には、パスポートを使って旅行することができる。この規定が適用されるのは刑事の税務訴訟や、政府が未払い税から逃れていると判断したケースだけに限られない。

実際、あなたが5万ドル以上を滞納しており、IRSが租税リーエンを提出した場合、それだけであなたのパスポートは取り消される可能性がある。加算税や金利を含めて5万ドルの滞納というのは一般的な水準であり、IRSは日常的に租税リーエンで通知している。これはIRSの債権者に対する通知方法なのだ。IRSは債務額を査定した後、支払い通知・催告を送付し、10日以内に支払われない場合、連邦税リーエンを提出することができる。

国内・海外に旅行する権利は基本的なものとして認識されている。また、規制が認められたとしても、提訴された場合にその合憲性が認められるか否かは不明瞭だ。提訴といえば、「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」について触れておくのも的外れとは言えないだろう。

FATCAでは、口座を保持している米国民の情報を供与しない海外銀行への罰則を定めている。海外には800万人程度の米国民が住んでいるが、その多くがいまだFATCAのコンプライアンス問題に揺れている。

編集 = Forbes JAPAN編集部

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