議論のポイントは副次的著作権だ。副次的著作権は、ハイパーリンクによって表示されたコンテンツに対して著作者が使用料を課金できる権利を指す。実際、この法律が施行されれば、検索結果にヨーロッパのコンテンツを掲載するあらゆるアグレゲーターに影響を及ぼす。
ハイパーリンクへの集中攻撃
ラダ氏の警告は、IPKatによってリークされた欧州委員会から欧州議会へ向けた著作権法に関する報告書の内容に基づいている。ハイパーリンクでコンテンツをリンクさせるという日常茶飯事の行為を、欧州委員会が著作権保護の対象にしようとしているとラダ氏はみている。もしそれが現実になれば「あらゆるハイパーリンクが地雷のように著作権を侵す状態になり、インターネット上での損害賠償がメディアや出版社の思うがままになる」と憤る。欧州委員会はハイパーリンクについて直接の言及を避けているが、”公衆への公開権”と”(著作権者の)許諾権”を保護するためにあらゆる手段を講じると明言している。
副次的著作権の定義とは?
コンピュータコミュニケーション産業協会(CCIA)が公表した文書では、副次的著作権を「検索エンジンやその他のプラットフォームで、引用も含めて、ニュース記事を断片的に抜粋する行為に対して使用料を課金できる権利」と定義し、副次的著作権法を施行しているドイツとスペインの法律を詳細に解説している。
スペインのGoogle税
スペインとドイツでは副次的著作権法を施行しており、スペインではスペイン版Googleニュースの閉鎖にまで発展した。スペインでは2015年1月に施行され、記事のリンクや引用に対して著作者側が損害賠償を請求できることになりGoogle税と揶揄された。ニュース記事のスニペットだけでなく、引用やレビューも対象となる。スペインの副次的著作権法には「教育および科学研究の用途での引用やレビュー、図解について」定めた条項も存在する。
スペインにおける副次的著作権について、「Google税はスペイン出版協会(AEDE)のロビー活動によって課された税金」とスペインのEl Paisは伝えている。記事によると、新法によってGoogle をはじめとするアグレゲーターはニュース記事を掲載もしくは引用した場合、メディアや出版社側へ使用料の支払いが求められることになった。
Googleを対象外としたドイツでの副次的著作権法
CCIAのレポートによると、ドイツ版の副次的著作権法は「検索エンジンが”メディアの著作物”を検索結果に表示することに法的責任を認め、検索結果を表示する自動集約機能に直接の法的責任を負わせるもの」とある。ドイツでは、最王手メディアを率いるアクセル・スプリンガー氏が中心となって法改正を後押しした一方、小規模メディアへの影響を配慮する形でGoogle に対しては無償でライセンスを与えている。
欧州委員会 vs. ハイパーリンク
リークされた欧州委員会の文書の中に、リンクやハイパーリンクという文言がないのは事実だ。しかしながら、「公衆への公開権」や「(著作権者の)許諾権」に関しての言及は、ハイパーリンクに著作権者の許諾は不要だとしたEUにおける過去の判例に対抗する意図が見え隠れする。それゆえ、まるでハイパーリンクがヨーロッパの新しい著作権法のターゲットであるかのようにうつるのだ。
ロダ氏によると、原案の公式発表は12月9日に予定されている。それにあわせて、彼女は欧州市民に対して「インターネットを壊滅させる」EUの新法成立に断固として反対するよう呼びかけている。CCIAもレポートの中で「ドイツやスペインで施行されたような副次的著作権法や、近い将来成立を目指している同様の法律は、すでに国際的に確立されている著作権法を混乱させる」と指摘している。
EUは過去にも、「忘れられる権利」や個人情報のやり取りに関する規制法など、インターネット関連ビジネスの発展に難題をつきつけてきた経緯があるゆえ、副次的著作権法をめぐるEUの動向を注視する必要がある。