従業員を対象に行った調査の結果、会社への信頼度や士気が2桁台の落ち込みをみせたにもかかわらず、人事担当の幹部が結果をごまかそうとしたことがきっかけで、副社長たちが一斉に不満をぶちまけ始めたのだ。
これが、時価総額およそ310億ドル(約3.8兆円)、中国の電子商取引最大手アリババの大株主であり、ヤフー・ジャパンの株80億ドル相当を保有する検索大手ヤフーの現状だ。直近の四半期決算では売上高が前年同期比で8%減、マリッサ・メイヤーCEOが最重要分野とする検索事業でも、13%のマイナスを記録している。
匿名を条件にフォーブスの取材に応じた同社幹部(退職者も含む)十数人は、こうした状況を招いた主な原因は、2012年に就任したメイヤーCEOの手腕にあると批判する。CEOによる戦略の混乱と経営判断のミスが、業績改善のチャンスを台無しにしてきたというのだ。
この件については取材を拒否したメイヤーCEOだが、10月の決算発表会ではウォール街のアナリストらに対し、「ヤフーには長期的かつ持続可能な成長を実現し得る適切な人材と戦略、資源がある」と主張。自身の就任以来、同社首脳陣の顔ぶれは「最強」だと強調していた。さらに、サンフランシスコで今月行われたビジネス会議では、業績改善に向けて「なすべきことは数多く残されている」と認めつつも、「ヤフーの未来を築いたことを心から誇りに思う」と述べている。
しかし、オイフサイト会議に参加した幹部らによれば、社内ではすでに、メイヤーの肩書に「元ヤフー」が付け加えられる時期についての憶測が飛び交い始めている。
設立間もなかったグーグルに入った20人目の従業員で、顧客との関わり方に素晴らしく長けた人物として一目置かれていたメイヤーは、データに基づいて決断するエンジニアとして高く評価されていた。
だが、ヤフー幹部の間には、グーグルで発揮された従来の手腕は熟慮を欠いた即断に取って代わったようだと嘆く声がある。メイヤーは細かい事柄にこだわりすぎるばかりに、多大な時間と労力、資金を浪費してきたという。
中でも従業員の士気を最も大きく低下させたのは、将来の展望を描くことなく実行に移された、製品開発チームのリストラだとみられている。新製品の開発は遅々として進まず、幹部たちは自らの将来に不安を募らせる中で、縄張り争いを始めた。
メイヤーの就任時、約13%だった米国のウェブ検索市場での同社のシェアは、現在はおよそ12.7%。同社の社員ですら、ヤフーで検索する人は、ほとんどいないと話す。メイヤーはかつて、「モバイルの検索の仕方を変えてみせる」と豪語したが、その言葉に対してあるアナリストは、「幸運を祈る」としか言えない、と冷ややかな反応を示していた。
社内にはメイヤーが敗北を認め、双子の出産を口実に「潔く」身を引くのではないかとの見方が出始めるほど、ヤフー内部はひどい状況だ。
だが、こうした結果はいずれにせよ不可避で、メイヤーの選択とは無関係だったのかもしれない。就任から1年がたったころ、ヤフー栄光の時代に同社の幹部を務めた人たちが集まった非公式の夕食会では、メイヤーの評価は一様に、「優れた人材」として高かった。それでも、彼女の成功には誰もが否定的だったという。その上、ヤフーを再び成長軌道に乗せる方法を明確に語れる人物は、誰一人いなかったのだ。