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2024.05.17 11:00

【米国株ウォッチ】ウォルグリーンは現水準では割安か?

安井克至
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Scott Olson/Getty Images

米国のヘルスケア、薬局、小売の総合会社であるウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(ティッカーシンボル:WBA)は、同社が展開するドラッグストアチェーンのBoots(ブーツ)の買い手候補と接触したとの報道を受けて、米国時間5月13日に株価が5%上昇した。

ブーツは英国を拠点とするドラッグストアチェーンで、その評価額は約90億ドル(約1兆3000億円)に上る可能性がある。ウォルグリーンが90億ドル以上の評価額でブーツの売却に成功すれば、このところパフォーマンスがすぐれなかった同社の株価を引き上げることになるだろう。いずれにせよ、WBAは現在の約18ドルという水準では割安だと私たちは考える。

株価パフォーマンス

WBAは2021年1月初旬の40ドル台から現在18ドル前後まで50%以上の下落に見舞われている。しかし、WBAの下落は一貫しているとは言い難い。2021年のリターンは31%、2022年はマイナス28%、2023年はマイナス30%だった。これに対し、S&P500のリターンは2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、WBAは2022年と2023年にS&Pをアンダーパフォームした。

バリュエーション

現在のバリュエーションを考えると、WBAは長期的に高水準なリターンが期待できそうだ。私たちはWBAの目標株価を、予想1株あたり利益3.28ドルの7倍にあたる24ドルとしている。ウォルグリーンのガイダンスでは、2024年の調整後1株あたり利益は3.20ドルから3.35ドルの範囲になると予想されている。目標株価の算出に利用した株価収益率(PER)7倍という数字は、過去4年平均の9倍をわずかに下回っているが、消費者需要の減退による当面の逆風を考えれば、PERの若干の切り下げは妥当と思われる。また、ブーツ事業の売却が実現すれば、株価はさらに高い水準まで上昇する可能性がある。

事業分析

ウォルグリーンがブーツ事業の売却を検討したのは今回が初めてではない。同社は2022年にブーツの売却を希望していたが、後に売却の意向はなくなったと発表した。この決断の背景には、金融市場の低迷と同社の期待に沿った入札がなかったことがある。当時、同社の海外事業は業績の足を引っ張り、2019年から2021年にかけて薬局および小売事業の売上高は7%減少した。オンライン薬局やディスカウント薬局の台頭は厳しい競争をもたらし、ウォルグリーンの海外事業の重荷となった。アマゾンによる薬局参入も小売薬局にとって良い兆候ではない。

そうした動きに対抗すべく、ウォルグリーンはオンライン事業と薬局内で提供する診療事業の拡大に注力し、収益の拡大を図ってきた。2021年のVillageMD(ヴィレッジMD)買収はその延長線にあったと言える。しかし、ヴィレッジMDはコスト削減と収益性向上のため、数百のクリニックの運営を停止せざるを得なかった。さらに、ウォルグリーンは前四半期にヴィレッジMDへの投資に関連する58億ドル(約8926億円)の減損損失を計上している。

全体として、WBAは、ブーツの売却があるなしに関わらず、現在の18ドル前後の水準では割安に見える。過去4年間におけるPERの平均が10倍であったのに対し、現在はわずか5倍で取引されている。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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