欧州

2024.05.16 10:00

ロシア軍の「亀戦車」、次々に仕留められ始める 砲弾への弱さ露呈

安井克至
1993

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4月上旬、ウクライナ各地の戦場に、ロシア軍の見慣れない装甲車両がのこのこと姿を見せるようになった。T-62、T-72、T-80といった戦車に、屋根材や格子、などの金属製外殻を取り付けた、俗称「亀戦車」である。

見た目は妙な格好をしているが、亀戦車は実は有効だ。いや、「有効だった」と言うべきだろう。というのもここ数日、ウクライナ側による亀戦車の破壊が相次いでいるからだ。戦争中に新しい技術や工夫が生まれても、それがずっともつわけではないことの実例でもある。

英国の兵器史家であるマシュー・モスは、数週間前にこうした展開を予想していた。「向こう数週間、亀戦車はさらに増殖することになりそうだが、ウクライナ側はそのうちこうした戦車とより効果的に戦うすべを見つけるだろう」

ロシア側にとって亀戦車の問題点は、この仕様は特定の技術的問題に対する技術的解決策だったということだ。特定の技術的問題とはもちろん、ウクライナ側が毎月、ロシア軍の部隊や車両に10万機差し向けている自爆型FPV(一人称視点)ドローンのことである。

たしかに、亀戦車の大きな甲羅はたいていの方向からFPVドローンをブロックできる。また、一部の亀戦車の甲羅にへばりついているジャマー(電波妨害装置)は、ウクライナ側のドローンの制御信号を妨害できるのかもしれない。

ウクライナ軍で最近まで最も重要な弾薬だったFPVドローンから身を守れる亀戦車は、比較的無傷でウクライナ側の陣地に近づくことができた。亀戦車は車体前方に装着したローラーで地雷を除去しながら車列を先導し、ほかの車両がウクライナ側の陣地に十分近い地点で歩兵を降ろせるようにしていた。

ウクライナ側がFPVドローンを中心とした陣地防御を強いられている限り、亀戦車はロシア軍の作戦に非常に役に立つものであり、半面、ウクライナ軍の作戦にとっては深刻な脅威だった。

とはいえ、ウクライナ各地に分散する小規模な施設で生産されている1機500ドル(約7万8000円)程度のFPVドローンは、ウクライナ軍にとって常にその場しのぎのものだった。ウクライナ軍はつい最近まで砲弾やミサイルが不足しており、FPVドローンはそれを補うための手段だったのだ。ウクライナ軍の弾薬が不足したのは、米議会下院のロシアに融和的な少数の共和党議員グループの手で、米国のウクライナ追加支援が何カ月も阻まれていたのが主な原因だ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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