アジア

2024.04.28 10:00

円安無策ニッポン、くすぶり始めた「シン・アジア通貨危機」シナリオ

安井克至
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習が元の切り下げに注意すべきもう理由はもうひとつある。日本の失敗を繰り返さないようにすることだ。通貨安はとくに、政治家や企業経営者から国の経済力を高めようとする意欲をそいでしまう。

1998年以降、日本の舵取りをした歴代12政権のいずれかが、通貨安よりも規制緩和、労働市場改革、生産性向上、女性へのエンパワーメントに優先的に取り組んでいたら、日本は今ごろどうなっていただろうか。

また、日本企業のトップたちが、ゼロ金利やマイナス金利に頼らずに経営しなくてはいけなかったとしたら、どうなっていたか? 史上最も手厚い企業保護が提供されたために、日本の企業経営者たちは構造改革やイノベーション、リスクテイクへのプレッシャーを感じずによくなってしまった。

日本がもし25年にわたってアルゼンチンのような通貨政策をとらなければ、2024年にどうなっていたかは、今となってはよくわからない。だが、中国や途上国などが日本の怠慢から汲むべき教訓が何かは、はっきりしている。

とはいえ、2024年のアジア経済は、ドルの独歩高によって債券市場や株式市場から大量に資金が流出し、激しく揺さぶられている。止まらないドル高は、世界的にインフレリスクが高まるなか、各国通貨に下押し圧力もかけている。

 そして、日本から米国まで、80年代を想起させるような通貨シナリオが舞い戻っている。年末にかけて、世界の市場は波乱含みになりそうな雲行きだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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