経営・戦略

2024.04.24 09:15

実名+顔写真入りのチラシで急成長。年商120億の学習塾が首都圏攻略へ

講師の質を担保できる理由は?

広告手法がいくら大胆でも、肝心の合格実績が貧弱では話にならない。フリーステップのような個別指導塾が高い合格実績を出そうとした場合、共通して直面する「壁」がある。それは、講師の質を担保することだ。

個別指導塾ではほとんどの場合、大学生のアルバイトが講師を勤めている。それゆえ、塾としても時間と費用をかけて講師を教育することは困難だし、どうしても教え方の巧拙に差が出てしまう。これは受験生から見ると「相性の良い講師に当たるかどうかは運次第」となる。仮に優秀な講師に担当してもらえたとしても、アルバイトだけにいつ辞めるかわからない。

こうした問題を解決するために、フリーステップが取り組んでいるのがITやデータの積極的な活用だ。

とはいえ昨今では、どの学習塾も程度の差こそあれITを活用している。同社の特徴は、2019年の段階でITシステム会社を買収し、自社でシステム開発をしている点だ。他社はほとんどが外注である。

では、どのようにITやデータを活用しているのだろうか。単に受講生の学習の進捗状況をアプリで管理する、といった程度ではない。実に「細かい」のだ。

ひとつが、テスト対策のためのテスト(Lapテスト)の作成。実際のテストや入試問題に近いものを、膨大なデータを基に生み出している。例えば、年間1万2150回以上の定期テスト問題を分析し、そのデータをもとに中学生向けの「定期テスト対策テスト」を作成。高校生向けには、入試問題を分析した入試対策用のテストも用意している。そして、その「実物に近いテストの点数」を基に、受講生の目標までの達成度を測定。指導内容にも反映させている。

また、毎年1万人以上の受講生の学習データを蓄積し、活用している。学習内容、活用した教材、模擬試験の点数の推移などである。例えば、ある受講生の志望校がAだったとする。その場合、過去にAに合格した受講生たちが、どの教材を使い、模擬試験の点数がどう変化していったのか、何を得意科目していたのか、といったデータを参考に、カリキュラムを組んでいく。

さらに現在開発中なのが、長年蓄積された膨大なデータをもとに、受講生ごとに最適化されたカリキュラムを自動でつくるシステム。2025年度にはテスト導入を計画しているという。

「私たちは業界でも、いちはやくITやデータ活用に取り組んできました。近年、データ活用の必要性はさらに高まっています。試験の点数だけでは決まらない『総合型選抜』のウェートが高くなるなど、入試傾向が年々多様化していることも一因です。個別の受講生ごとにカリキュラムを組むことが求められているからです。IT・データ活用は、私たちにとっては必然でした」(永井社長)
永井博社長

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文=下矢一良

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