事業継承

2024.03.15 12:00

多様化する新・事業承継 注目の4社に学ぶ会社存続のヒントとは

Forbes JAPAN編集部
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友安製作所|個より集の力でものづくりを発信

クリエイティブユニットとコラボした「BRUSHUP」シリーズ

クリエイティブユニットとコラボした「BRUSHUP」シリーズ

約3000社の多様なものづくり企業が集積する大阪・八尾。この地で友安製作所は、1948年にネジを製造する町工場として産声をあげた。戦後の高度経済成長期に和室より洋室が普及していくなか、金属製カーテンフックを加工する工作機を独自開発し、国内7割のシェアまで業績を伸ばした。だが、1980年代になると、プラスティック製の輸入品に押され、需要が激減。会社存続の危機のなか、先代の父(現会長)が一時病で倒れ、高校時代から米国留学し、現地の商社で働いていた友安啓則が帰国し、3代目社長となる。第二創業してDIYやインテリア商材の輸入や製造販売を手がけるようになった。

「子どものころからアトツギと言われて育ちましたが、自分で商売をしたいという思いが強かったです。一方で、職人である父に憧れもありました。かつては30人ほどの従業員がいて活気のあった町工場も僕の入社当時は5人ほど。倒産寸前で正直、期待外れでした」と苦笑いする。そんななか始めたインテリア事業とともに自社ECの立ち上げで販売力を身につけ、売り上げを25倍に伸ばした。

「世界中の人々の人生に彩りを」というビジョンを掲げ、東京や大阪、福岡に商品を手に取って見られるカフェをオープンしたり、工務店として近隣のものづくり企業のオフィスリノベーションを手がけたり、事業の多角化を進めた。さらに最近は地域共創の磁場として「まちづくり会社」へと生まれ変わりつつある。

転機は、八尾市が中小企業経営者の交流の場として2018年に市内に「みせるばやお」をつくり、そこから生まれた近隣自治体の工場を巻き込んだ合同オープンファクトリーイベント「FactorISM(ファクトリズム)」に参加し、運営にもかかわるようになったことだ。これらの中小企業間ネットワークづくりを促したのが、元八尾市職員の松尾泰貴だ。彼が21年4月に友安製作所に転職し、執行役員として経営にかかわるように。現在はFactorISMのクリエイティブ監修や地場の企業のコラボ商品開発や組織改革まで、友安メソッドを地域に広げていこうとしている。地域とともに永続的発展を目指す好事例だ。

「自社で売る力をつけたらものづくり企業は最強です。さらにジャパンブランドは世界で驚くほど強い。だから個より集の力で、日本のものづくりの魅力を世界に発信していきたい」

友安啓則
◎1978年生まれ。City University of Seattleで経営学修士 M.B.A.を取得。2004年に父親が営む線材加工製造業の会社へ入社し、インテリアの輸入商材を販売する新事業、翌年Web事業部を立ち上げ。16年代表取締役社長に就任。みせるばやお代表理事、FacorISM副実行委員長。

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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