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2024.03.08 08:15

賃金「格差逆転」103%、「女の方が給料高い企業」のリアル

Getty Images

経済協力開発機構(OECD)によれば、2022年の日本の男女賃金格差は21.3%で、OECD加盟国平均11.9%の約2倍だった。G7の中では最低の数字となった。背景には、女性管理職の少なさ、非正規雇用の男女格差、無意識の差別(アンコンシャスバイアス)などがあげられる。

2022年7月には、雇用者数301名以上の企業には男女の賃金格差を開示するように義務付けている。しかし、義務ではないにもかかわらず男女賃金格差を公表したIT企業がある。さらに、公表した数字は女性の方が3ポイント上回っている。つまり、女性の賃金の平均が男性より少しだけ高いのだ。

企業のデジタルトランスフォメーション(以下、DX)を支援するスパイスファクトリーだ。2016年に創業し、2022年度から開示された男女賃金格差は当時すでに108%で女性が上回り、2023年度でも103%で女性の方が高い数字を出している。

人材サービスのヒューマンリソシアの調査によれば、IT企業の男女賃金格差は、男性を100%とした場合、女性は80.5%だった。約20%の差があることが平均にもかかわらず、スパイスファクトリーはなぜ格差を解消しているのか、そしてそれに向けてどのような取り組みが行われているのか。同企業のCSO(チーフサステナビリティオフィサー)であり、企業の情報開示に積極的に取り組む流郷綾乃に詳しく聞いた。


━━そもそもなぜスパイスファクトリーは、義務ではないにもかかわらず、男女賃金格差を開示しようと思ったのでしょうか。

スパイスファクトリー CSO(チーフサステナビリティオフィサー)流郷綾乃:(以下、スパイスファクトリー 流郷)代表の高木広之介は「人的資本の情報開示」に熱い想いがあり、会社として取り組んでいこうとしていました。人間らしく働くことは、性別、年齢、国籍関係なく当たり前のこととして組織が守っていかなくてはいけないと思っています。

スパイスファクトリー CSO(チーフサステナビリティオフィサー)代表 流郷綾乃

スパイスファクトリー CSO(チーフサステナビリティオフィサー) 流郷綾乃


男女賃金格差は、その一環として開示されています。まだ創業10年にも満たないスタートアップなので、そもそも情報が整理されていません。まずは開示するためのデータを集めるところからチームでとりくんでいきました。システムを導入し、情報を整理し、計算していく。大変な作業でしたが、そのおかげで自分たちの会社の現在地がみえてきました。

(スパイスファクトリーはnoteやSNSを使って、積極的に自社の数字を開示している)




━━DXをすすめるITスタートアップが、なぜ環境・社会・ガバナンス(ESG)課題を含むサステナビリティ(持続可能性)にも注力し、チーフサステナビリティオフィサーをおこうと思ったのでしょうか。


スパイスファクトリー 流郷:最初に高木から声がかかった時は、「流行りのSDGsを取り入れようとしている会社なのかもしれない」と身構えました。しかし、高木としては「自分たちはDXを進めて社会にいいことをしているつもりだけれども、もしかしたらバイアスがかかって知らず知らずのうちに社会に悪影響を及ぼしている可能性もある。ネガティブチェックをしてほしい」という提案でした。

IT企業のスタートアップとしては珍しい経営のあり方に感動して入社を決めました。当時20数名の会社が本質的な組織のあり方を追求していると思ったのです。

━━男女の賃金格差には、ポジションや業務内容では言語化が難しい「説明できない格差」が6%あると言われています。スパイスファクトリーがその格差を解消しているのは、どういう理由が挙げられますか。

スパイスファクトリー 流郷:取り組み例として毎月どの作業にどれくらいの時間を有していたかを細かく測定し、振り返る文化があります。こうした「コト」に向かう姿勢が「誰が(Who)」よりも「何を(What)」を重視することにつながり、結果としてバイアスが薄れていったのではないかと推察しています。

━━無意識の差別(アンコンシャスバイアス)を解消するためには、どのような取り組みをされていますか?

スパイスファクトリー 流郷:そもそも差別的であることが「ダサいよね」という企業のカルチャーがあるんです。だからこそ、仕事において性別を意識しにくいと思います。

例えば、役員を含むすべての正規雇用メンバーを対象に、「働きがいのある会社」アンケートを実施しました。結果として、社員が「性別、人種、年齢、性的指向にかかわらず平等に働けていると感じているか」についての質問に、90%以上のメンバーが肯定的に回答しています。これは、雇用形態、勤続年数、役職、性別に関わることのない公平な価値観を持つ、組織内のダイバーシティに対する高い意識状態を示しています。

また、女性取締役や女性執行役員の経営参画、社会貢献への姿勢などを会社のメッセージとして伝え続けているブランディングによって、バイアスの比較的少ない方やダイバーシティについての価値観を持った方が組織に参加しており、企業文化や価値観を醸成しています。

━━企業としてジェンダーバランスを意識する上で、課題に思っていることは何でしょうか。

スパイスファクトリー 流郷:社会的に男、女に対してのバイアスがかかっているという事実だと思います。やはり、スパイスファクトリーにおいても特にエンジニア層については圧倒的に男性のエントリーのほうが多いのが実情です。エンジニア=男性のイメージが強く、入り口の職業選択の時点でバイアスがかかっているのかもしれないです。社会的なバイアスが解消され、女性も積極的にエンジニア職に挑戦してもらうことを願います。

━━最後に、男女賃金格差を解消したいと思っている企業に対して、何かアドバイスはありますでしょうか。

スパイスファクトリー 流郷:まずは情報のキャッチアップをすることで、世界に起きていること、日本に起きていることにアンテナをはることが大事です。その結果、自分自身にバイアスがないかどうか気をつけることができます。そして現在地の把握をすること。そのためには、自社の情報を集め、開示することで自分たちが取り組まなければいけない課題が見えてくるはずです。

文=井土亜梨沙 編集=石井節子

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