経営・戦略

2023.08.14 13:30

「ファイナンス思考」で日本オリジナルの開示を|人的資本経営トーク#9

1000社以上へCHRO機能の強化支援実績を持つLUF会長の堀尾司が、Forbes JAPAN Web編集長・谷本有香氏とともに、注目のビジネスリーダーやCHROをゲストに迎えて贈る「人的資本経営の時代を考える」トークセッション。その第9回目が7月18日、X(旧Twitter)スペース上にて行われた。

ゲストは、ZENKIGEN 代表取締役 CEOであり、人的資本経営推進協会の代表理事も務める野澤比日樹氏。ファイナンス思考をベースとした指標策定により、日本に最適化した人的資本の情報開示に取り組む同氏の思いに迫った。


全能力を発揮する━━ 禅の言葉が社名の由来

野澤氏が代表取締役CEOを務めるZENKIGENは、採用DXや1on1改善サポートAIといったサービスを提供するHRテック企業。2022年秋には、一般社団法人 人的資本経営推進協会を設立し、野澤氏自ら代表理事に就任している。以前から交流のあった堀尾が「人的資本についてトークするなら、いずれはゲストに招きたかった」と語る人物だ。

冒頭で話題に上がったのは、ZENKIGENという社名。その由来について、野澤氏はこう説明する。

「『全機現』は、人が持つ能力をすべて発揮することを表す禅語です。当社の創業精神は『For Our Next Generation』というもので、一人ひとりが全機現するのはもちろん、自分の人生を生きる大人たちの姿を見て、次の時代を担う子どもたちが夢や希望を持てる社会をつくりたいとの思いで、この名前を付けました」(野澤氏)

語感が強いため、当初は社名には向かないのではないかと悩んだというが、「カイゼン」や「モッタイナイ」のように、日本発信の世界共通語として定着させたいとの気持ちも強かったと野澤氏は語る。

この説明に賛意を示した谷本氏は「人的資本経営を端的に言い現わせる言葉を探していましたが、まさにこれだと思いました。世界中に流行らせたいですね」と感想を述べた。

野澤氏について、堀尾は「ブレずに全機現を体現しているにも関わらず、ニュートラルで自然体の印象があります」という。全力で先頭を走りながら、なぜニュートラルでいられるのかを問われた野澤氏の回答は以下だ。

「実は『全機現』にはもう一つ、ありのままという意味があります。それを知ってからは、肩ひじを張らず、自分の役割と向き合い、自分の人生を生きるという意識を持つようになりました」(野澤氏)

近年、人的資本に関連して話題となっている心理的安全性やウェルビーイングともつながる考え方だ。

ファイナンス思考で、未来のストーリーを

続いて話題は、野澤氏が設立した人的資本経営推進協会に移った。堀尾から立ち上げの経緯を問われた野澤氏は、こう語る。

「近年になり、欧米の影響で人的資本経営に注目が集まっていますが、もともと日本には『三方良し』『人本主義』『右手に算盤、左手に論語』など、事業を通じて広く社会の発展に貢献すべきであり、そうした価値を生み出すのは人だという考え方があります。そこで、日本的経営観をベースに日本独自の人的資本経営を研究し、ルールづくりや情報発信を行う団体が必要だと考えました」(野澤氏)

これを受け、谷本氏は「おっしゃるように、日本はもともと人を大切にしてきたにも関わらず、言語化や体系化が苦手だったと思います。テクノロジーやデータはもちろん重要ですが、あくまでも人を生かすための手段だという意識を忘れないことが重要ですね」とコメントした。
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文=山口 学

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