欧州

2024.05.01 09:30

ウクライナの最新ドローンに対抗するロシアの「ローテク戦略」

木村拓哉
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前線では、全体を大きな装甲で覆った、まるで亀のような見た目のロシア軍の戦車が登場している。砲弾不足に陥っているウクライナ軍は、少量の爆薬を搭載したドローンを使ってロシア軍の戦車の脆弱な部分を正確に狙い、効果的に無力化する作戦を取っている。

木と金属を組み合わせた亀の甲羅と戦車の車体の間には隙間がある。この設計により、ドローンが甲羅を攻撃しても、爆発によって戦車本体が傷つくことはない。だが、このかさばる重い甲羅には欠点がある。砲身の角度が制限され、機動性は低く、戦車の機能が損なわれる。ともあれ、このドローン対策はかなり効果的なようで、生き延びられるよう殺傷能力と機動性を犠牲にするロシア軍の戦車が増えている。

戦略的なレベルでは、最近ロシア軍がウクライナのエネルギーインフラに対して行っているミサイル攻撃も広範なドローン対策の一環だ。攻撃は脆弱性につけ込んでいる。この場合、ウクライナの防衛企業がドローンを開発・製造するのに電力が必要という点を突いている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4月初め、インフラ攻撃の主な目的は「ウクライナの軍産複合体に影響を及ぼすこと」だと明言した。エネルギーインフラを標的にすることで、狙い通りウクライナ企業が新しいドローン技術を軍に提供できないようにしている。ウクライナのドローン開発を鈍らせれば、ロシアはドローン対策の新技術を開発して実戦投入するのに必要な時間を稼ぐことができ、戦場での重要な優位性を自軍にもたらすことができる。

ロシア軍は歴史的にドローン対策の技術でリードしており、現代の戦闘における電子戦を編み出してきた。だが戦争が長引くにつれて、ロシアの従来のドローン対策はウクライナのドローンの進歩に遅れをとっている。その結果、ロシア軍はウクライナ軍のドローンの脅威を軽減するために、これまで取っていなかったローテクな戦術を採用している。フェンスの設置や戦車への甲羅の取り付け、ウクライナの送電網への攻撃などだ。これらの策は、少なくともウクライナのドローンが進化し、ロシアのドローン対策が古いものになるまでは当面有効と思われる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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