起業家

2024.05.02 13:30

DXでノンデスクワーカーのインフラへ

Forbes JAPAN編集部
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ライニー:そのとき諸岡さんは確かに落ち込んでいたけれど、まったく諦めてはいなかったんです。その粘り強さは本当に素晴らしい。僕は個人的なスタンスとして、生涯をかけてその会社を経営していく姿が想像できない限りは投資しないんです。この点について諸岡さんに疑問をもったことは一度もない。実際、そこからはすごく順調に伸びてきたよね。

諸岡:そうですね。プロダクトだけをピボットしてもダメだと思い、自分自身を見直して、変なプライドをもつのではなく、みんなに助けを求めて、なりふり構わずやるというマインドに変えました。会社のミッションやビジョンも刷新して発信していった。ジェームズや澤山さんにも、プレスリリースのたびに「必ずSNSでリツイートしてくれ」とお願いして。プロダクトについては、過去3年間で学んだことを生かして今の「カミナシ」としてつくり直し、少しずつ成果が出るようになりました。

ライニー:21年3月のシリーズAのタイミングでは、売り上げはまだ大きくなかったけれど、顧客にヒアリングをしてみるとPMF(プロダクト・マーケット・フィット)の感触があって、リード投資をしました。そこからは期待通りの進展です。

諸岡:これまで僕らはひとつのプロダクトで成長をしてきましたが、現場仕事の課題はまだまだ残されていて、今後はマルチプロダクト展開を進めていきます。ホワイトカラーでは、いろんな会社のSaaSを導入するのが当たり前ですが、人の入れ替わりが激しく、習熟の手間もかかる現場からするとそれは現実的でない。ひとつの会社が必要な機能をオールインワンで提供してくれて、しかもそれなりに安価でないと、絶対にDXは進まないんです。

ライニー:カミナシはノンデスクワーカーのインフラになると思いますし、ユニコーン以上の規模になると確信しています。僕がキャピタリストとしてすごくラッキーだったのは、キャリアの早いタイミングでSmartHRのような会社に投資できて、その成長を社外取締役として詳しく見てきたこと。その学びを生かしてフルコミットしていきます。


ジェームズ・ライニー◎Coral Capital創業パートナーCEO。JPモルガン、現Coincheckの共同創業者兼CEO、DeNAの投資担当を経て、2015年より500 Startups Japan 代表兼マネージングパートナー。19年より現職。

もろおか・ひろと◎カミナシ代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングを経て12年、家業であるワールドエンタプライズに入社し、LCCの予約センターの立ち上げなどに携わる。16年12月カミナシ創業。

文 =眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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