欧州

2024.01.19 09:30

ウクライナの「フランケンSAM」 初の敵機撃墜に成功

遠藤宗生
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ウクライナ軍が運用する旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「ブーク」(paparazzza / Shutterstock.com)

1年前、ウクライナ軍の司令官たちは、運用する旧ソ連製の古い防空システムのミサイル不足を懸念していた。西側諸国が供与を約束したレーダーや地対空ミサイル、対空砲は順次ウクライナに送られていたが、供給ペースは遅かった。

そこでウクライナは隣国ポーランドとチェコに目を向け、両国が数年前に行ったことを実行したようだ。それは、旧ソ連製の防空システムを改造し、西側製のミサイルを発射できるようにすることだ。

当局者はこうしたハイブリッド地対空ミサイル(SAM)システムを「フランケンSAM」と呼んでいる。そのうちのひとつが、初の敵機撃墜に成功した。標的となったのは、ロシア軍のドローン(無人機)のシャヘドだ。

ウクライナのオレクサンドル・カムイシン戦略産業相によると、この攻撃は1月16日夜~17日未明にかけ、射程9kmで行われた。急襲したシャヘド20機をフランケンSAMが迎撃し、うち19機を撃ち落としたという。

どのフランケンSAMがシャヘドを撃墜したのかは不明だ。フランケンSAMには3つのバージョンがある。1つ目は、米国製の艦対空ミサイル「シースパロー」と旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「ブーク」を組み合わせたもの。2つ目は、米国製の空対空ミサイル「サイドワインダー」を発射する旧ソ連製の別の車両(おそらく「オーサ」)。3つ目は、米国製の地対空ミサイル「パトリオット」とおそらく旧ソ連製のレーダーの組み合わせだ。

ブークを使用したフランケンSAMは、レーダー誘導のシースパローで約16km先の標的を狙えるはずだ。赤外線誘導のサイドワインダーを発射するタイプの射程はやや短いかもしれない。レーダー誘導のパトリオットを使用したパターンは最も射程が長く、約145kmだ。

射程の短い2バージョンは昨秋、米国で試験が行われたと伝えられている。射程の長いバージョンは、今も開発中である可能性がある。

3つ目のバージョンが遅れているのには理由がある。ブークと、おそらくオーサを使ったそれぞれの組み合わせには、前身となるものがある。2012年、ポーランドの企業が外国のバイヤーに対し、ブークとシースパローの組み合わせを売り込んでいた
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翻訳=溝口慈子

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