欧州

2023.12.02 10:00

敵発見から破壊までわずか80秒 ウクライナのドローン、橋頭堡防御の要に

遠藤宗生
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80秒。これは、ウクライナ軍のチームがロシア軍の戦闘車両をドローン(無人機)で発見し、2機目のドローンを送って破壊するまでにかかった時間だ。

ウクライナの著名なドローン指揮官ロベルト・ブロブディによると、これはロシアがウクライナに対する戦争を拡大して以降、ドローンによるキルチェーン(目標の識別から破壊までの一連の処置)としては最速記録になったという。この数字はまた、ある重要な戦場で、ウクライナ軍のドローンによるロシア軍の車両や歩兵に対する脅威が一段と高まっていることも物語る。

このドローン攻撃は最近、ウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川左岸(東岸)沿いにある集落、クリンキの東端であった。ドニプロ川左岸は現在、ほとんどをロシアが支配している。

10月上旬、ウクライナの海兵隊部隊は小型ボートでドニプロ川を渡り、一連の歩兵行動を敢行して初めて持続的な橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。海兵たちはこの橋頭堡を拡大すべく、左岸で戦闘を続けている。

ウクライナ側はクリンキ上空で局所的な航空優勢を確保している。これは偶然の結果ではない。ウクライナ軍の砲兵部隊やドローン部隊、電子戦部隊は秋口に、数週間かけてドニプロ川左岸のロシア側の防空システムや無線妨害装置をつぶしていった。同時に、敵のドローンが飛べないようにする無線妨害装置を設置していった。

ロシア側の失態もあったらしい。ロケット砲で自軍の第144自動車化狙撃旅団の妨害装置車両を近距離で誤射し、爆破してしまったというがある。

ともあれ、入念な準備の結果、ウクライナ側のドローンが圧倒的に優勢な戦場ができ上がった。クリンキにいる海兵隊部隊は2、3個程度の中隊か大隊だが、ロシア軍の旅団や連隊がこれまで、ウクライナ軍の小規模な部隊を押し戻せていないのは理由のないことではないのだ。

ロシア軍はヘルソン州南部でウクライナ軍の10倍程度の兵力を擁するとも考えられる。だがクリンキ周辺では、どこへ進むにも多数のドローンによる攻撃を受けるという状況にある。

しかも即座に。ブロブディのドローン運用チームは、最速記録を打ち立てたドローン攻撃を記録し、それをソーシャルメディアで共有した。その内容は、ウクライナ軍のドローン操縦士がますます即応性を高めていることを示すものだった。


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翻訳・編集=江戸伸禎

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