欧州

2023.11.24 10:00

ウクライナ軍、75年前のソ連製榴弾砲をトラックに乗せ自走砲に

遠藤宗生
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KS-19対空砲(FotograFFF / Shutterstock.com)

ロシアとウクライナが現在繰り広げている戦争の特徴は、砲撃戦であることだ。あるいは、砲「弾」戦と言った方がよいかもしれない。戦車や戦闘車両の投入以前に、大砲向けの砲弾を安定供給している軍が優位に立つ。

このことから、ウクライナは今、危機的な状況に置かれている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領いわく、砲弾の「倉庫は空」となっており、最も優れている北大西洋条約機構(NATO)規格の155mmの砲弾の供給が不足しているのだ。

そうした中、ウクライナ軍のある領土防衛旅団は、75年前の榴弾(りゅうだん)砲を最新の小型トラックにボルトで固定して全く新しいタイプの自走砲を作り出している。1940年代に製造されたKS-19対空砲の射程は、フランス製のカエサル自走榴弾砲などには及ばない。

だが、KS-19は100mmの砲弾を発射する。自走式KS-19を前線で使用していることが確認されているのはこれまでのところ第241領土防衛旅団だけのため、最も需要の高い155mmの砲弾を発射する大砲を運用している旅団と砲弾を奪い合う必要はない。

古い砲をボルトで新しいトラックに据えるというのは、ウクライナ軍が100万発ほどの155mm砲弾が手に入るという奇跡を祈る間、砲弾不足に対処する一つの方法だ。

KS-19は悪い砲ではない。ただ古いだけだ。旧ソ連が1947年に運用を開始した重量10トンのけん引式のKS-19は主に対空兵器として機能した。KS-19は最大で高度約8000m、約21km先の空中の標的に高性能の砲弾を撃ち込むように設計されているが、地上の標的も狙えない理由はない。

重量16kgのKS-19の砲弾は秒速約1kmのスピードで飛ぶ。米中央情報局(CIA)は1969年にKS-19の砲弾について「装甲の薄いものやその他の地上の目標に対して有効」と評した


ソ連崩壊に伴って1991年にウクライナが独立した際、ウクライナ軍は旧ソ連軍からKS-19を引き継いだ。そしてロシアが昨年2月にウクライナに侵攻するまで、ずっと倉庫に保管されていた。
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翻訳=溝口慈子

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