欧州

2023.09.21 12:00

ロシアの小型ドローンでウクライナの戦闘機損傷か 航続距離伸び脅威増す

遠藤宗生
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ウクライナ軍のミグ29戦闘機(Volodymyr Vorobiov / Shutterstock.com)

限られた戦力で懸命に戦うウクライナ空軍にとって悪いニュースだ。

爆薬を積んだロシア軍のドローン(無人機)が19日かそれ以前に、ウクライナ中部ドニプロペトロウシク州クリビーリフ近郊のドウヒンツェベ空軍基地に駐機中だったミコヤンMiG(ミグ)-29戦闘機を攻撃し、損傷させた。一部のウォッチャーからは異論も出ているが、攻撃の映像がフェイクだと判断する根拠は乏しい。

ウクライナで就役しているミグ数十機の一機であるこのミグは、もしかすると修理できるかもしれない。だが、ここでの本質的な問題は修理できるか否かではない。

問題は、ロシア軍が運用する自爆ドローンの航続距離がいまや70kmほどに達しているらしいということだ。ウクライナ南部の前線とドウヒンツェベ空軍基地は直線でこれくらい離れている。

ロシア軍もウクライナ軍も、小型の自爆ドローンを用いて相手側の防空システムや火砲、補給車列、装甲車両をたたいている。ときには掩蔽(えんぺい)部や塹壕(ざんごう)にいる歩兵を攻撃目標にすることすらある。

こうした爆発型ドローンのなかで最も数が多く、最も効果の高い部類に入るのが、ロシア側のランセットである。ただ、基本モデルの「イズデリエ51」(重さはわずか約11キログラム)の航続距離はこれまで、40kmほどにとどまっていた。

つまり、ウクライナ側の主要な空軍基地や、それらを拠点とする何十機かのミグやスホーイはすべて、ランセットが飛んでいける範囲外だった。

だが、ロシアは航続距離がもっと長いランセットを開発しており、それを隠そうともしていなかった。ロシアの宣伝機関であるスプートニクは8月、最新モデルの「イズデリエ53」は航続距離が最大70kmにおよぶと紹介し、このモデルは「ランセットの進化の次の段階であり、設計者たちは阻止するのはまず不可能と見込んでいる」などと伝えていた。

ドウヒンツェベ空軍基地のミグに対する攻撃は、この新モデルの実戦デビューだった可能性がある。それと同じくらい憂慮されるのは、攻撃の様子を2機目のドローンが上空から撮影した映像から察するに、基地の防空システムが稼働していなかったか、あるいは稼働していても機能しなかったとみられる点だ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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