欧州

2023.09.14 09:00

ロシア、1950年代のT-55戦車でウクライナ反攻に対抗

遠藤宗生
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ウクライナ軍の旅団が8月中旬、ロシアが占領する黒海近くの町メリトポリにつながる要衝ロボティネとその周辺でロシア軍の防衛線を突破し始めると、ロシアは慌てふためいた。そして、作戦に使える予備軍で最後の精鋭師団とみられる第76親衛空挺師団の配置を東部戦線から南部戦線へと変えた。

だが、ロボティネからメリトポリにかけての攻勢軸にロシアが増援部隊として派遣している戦車は、第76衛兵航空突撃師団に多数配備されているとみられるT-72やT-90だけではない。かなり古いT-55も投入しているようだ。

このことは、T-55を運用する第1430自動車化狙撃連隊が9月10日かその少し前に公式テレグラムチャンネルに投稿した映像から明らかになった。同連隊はこの映像で、1950年代製造のT-55を誇らしげに披露していた。

映像には、口径100mmのD-10T砲の上にL-2G赤外線スポットライトを搭載したT-55初期モデルに乗る第1430連隊の徴集兵が映っている。

スポットライトで照らされた標的は、数百m先であってもアクティブ式赤外線暗視装置で確認できる。問題は、このスポットライトが赤外線暗視装置を持つ敵軍にも見えることだ。

T-55は夜間に戦う際、どうしても自らの居場所をさらしてしまう。これとは対照的にウクライナ軍の戦車は、スロベニアが供与し大幅な改修が施されたT-55も含む全車両が、スポットライトを必要としないパッシブ式の画像補正装置や赤外線暗視装置を搭載しており、位置を敵に明かすことなく夜間でも戦える

もちろん、第1430連隊のT-55がウクライナ軍の戦車と直接戦うことはないかもしれない。少なくとも、意図的にそうした作戦に投入されることはない。ロシア軍は通常、60年前のT-62、ましてや70年前のT-54やT-55を諸兵科連合の編隊に含めて装甲攻撃を実施することはない。

こうした戦車はその代わりに、戦線の数km後方に配置され、粗末な榴弾砲として使用されている。乗り込むのはたった1人だけの場合もある。ロシア軍の戦車はすべて、長距離砲撃を可能にする線入りの照準器を備えており、戦車兵は状況に応じて砲兵として動くよう指示されている。
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翻訳=溝口慈子

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