経済・社会

2023.09.10 11:30

ドラマ「VIVANT」 謎の部隊「別班」 優秀な工作員の条件は円満な夫婦関係にあり

Photo by Michael Buckner/Variety via Getty Images

TBS系日曜劇場で放送中のテレビドラマ「VIVANT」(ヴィヴァン)。堺雅人が演じる乃木ら6人が所属する自衛隊の秘密部隊「別班」に注目が集まっている。日本政府は2013年12月の答弁書で「『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』なる組織については(中略)、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」と否定している。だが、何人もの関係者が「別班は存在する」と語る。詳しく知る人物(元公務員だが、詳しい職責は明らかにできない)に、堺雅人のような優秀な別班員がいるのかどうか聞いてみた。

この人物はドラマ放映開始後、現役の別班員たちにドラマの感想を聞いたという。皆、「ドラマでは、自衛隊で最も優秀なエリートたちと紹介されているけど、俺たちエリートじゃないし」と面はゆい表情で語っているという。

別班に新しく採用される人は、29歳程度の1等陸尉か30代前半の3等陸佐クラスが大半だ。班長は40代手前くらいの2等陸佐のため、自らが昇進を望まないなどの事情がない限り、別班で働くのは、長くても5〜10年程度だという。陸上自衛隊でエリートと言われる人々は、陸上幕僚長や師団長などに任じられる人だが、別班員らは情報収集の職人という存在で、そのような昇進コースに乗ることはほとんどない。

では、別班員はどのような仕事をしているのか。別班は非公然組織であるため、自衛官の身分は維持しつつも、所属は「陸上幕僚監部付き」になる。自衛隊の組織から切り離され、身分を偽装して活動する。別班員たちは雑居ビルに作った「○○研究所」といった仮の仕事場に出勤する。きちんと職場があれば、ましな方で、場合によっては、インターネットのホームページにだけ仮の会社を立ち上げ、実際は「アジト」と呼ぶマンションの一室などに出勤している例もある。名刺の肩書は「研究員」だったり、「フリージャーナリスト」だったりする。

仕事は、北朝鮮や中国、ロシアの内部情報の収集だ。港湾や飛行場などの詳細な情報、軍糧米の備蓄状況などについて調べているという。現地に赴く日本人や現地の人々に協力を依頼し、人的情報(ヒュミント)を集める。ただ、北朝鮮は入国が極めて難しく、2020年1月からは日本人の入国は許されていない。中国も2014年から反スパイ法を制定した。このため、ほぼ現地に住む人々の協力が必要になる。
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文=牧野愛博

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