欧州

2023.08.26 08:00

F16を手にするウクライナ、次に必要なのは米巡航ミサイル

遠藤宗生
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米ロッキード・マーティンが開発したステルス巡航ミサイル「統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)」(Getty Images)

デンマークとオランダが、自国で余剰となる米ロッキード・マーティン製F16戦闘機、計61機をウクライナに供与すると発表した。引き渡しには半年ほどかかる見通しだが、配備されればウクライナ空軍が現在保有するミグやスホイといった40~50年前の戦闘機や爆撃機の半数を置き換えられる。また、約125機の旧ソ連製戦闘機と61機のF16を並行運用して、前線の空軍兵力を1.5倍に増強することも可能だ。

どちらにせよ、ロシアによる侵攻が19カ月目に突入する中で最も重要なのは、米国製のF16に搭載できる兵器は何かということだ。それは、最新鋭の空対空・空対地ミサイルと精密誘導爆弾である。いずれもウクライナの戦闘機の攻撃可能距離を拡大し、パイロットはロシア軍の防空網に身をさらす危険を冒すことなく占領地域の奥深くにある敵陣地を叩けるようになる。

ウクライナはすでに同盟国からさまざまな最新の武器弾薬の供与を受けている。供与された弾薬を搭載できるようウクライナ空軍のミグ29戦闘機やスホイ27戦闘機、スホイ24爆撃機を改造しており、デンマークとオランダから引き渡されるF16にも同様の換装を施すだろう。さらにF16ならば、旧ソ連製の機体では必ずしも活用できない同盟国の弾薬の優れた機能を余すことなく活用できる。

しかし、最大の違いを生む可能性のあるミサイルは、まだウクライナの「欲しい物リスト」に残ったままだ。ロッキード・マーティンが開発した統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)は、射程370km、重量2トンのステルス巡航ミサイルである。米国がJASSMのウクライナへの供与を承認しない限り、同国軍のF16は十分な能力を発揮できない。

米カリフォルニア州のシンクタンク、ランド研究所のアナリストであるブリン・タネヒルは今年5月の論評で、「F16がウクライナで実戦配備されるまでには、まだ長い道のりがある。そして、F16が戦争の結果にどれだけ影響を与えるかは未知数だ」と解説した。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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