欧州

2023.08.23 09:00

ロシアを脅かすウクライナ最強の長距離兵器、S-200を最新レーダーで換装か

2021年5月、ロシア・モスクワ近郊の愛国者公園に展示されたS-200地対空ミサイルシステム(TanyaRuza / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍は1960年代に開発された古くて巨大なS-200地対空ミサイルシステムの一部を、地上攻撃兵器に転用した。これはもはや秘密でもなんでもない

謎なのは、ウクライナがS-200の8トンの5V28ブースト滑空ロケットを、いったいどうやって自国で最も強力な縦深攻撃兵器に改造したかだ。

あるミサイル専門家がこんな仮説を立てている。ウクライナの技術者は5Vs8の機首のレーダーを新しいシーカー(目標捜索装置)で置き換えたのではないか。そのシーカーは新型地対地ミサイル「グロム(フリム)2」のレーダーかもしれないと。

以前ツイッターという名前だったSNSでそんな見解を披露したのはトレント・テレンコだ。米国防総省の国防契約管理局(DCMA)で品質監査官を務めた経歴をもち、S-200や5Vs8ミサイルに精通した人物だ。ちなみにS-200はもともと、旧ソ連の第1設計局が米軍の核搭載爆撃機を撃墜するために設計したものである。

グロム2は、ウクライナのユージュノエ設計局が既存のトーチカU弾道ミサイルに代わるものとして開発を続けてきた。射程約500キロメートルの単段式固体燃料ロケットで、状況に合わせ、目標へ向かって飛行経路を正確に微調整できるミリ波レーダーを搭載する。

5V28には確かにグロム2のコンパクトなレーダーを収められる空間がある。「(5V28は)ばかでかいミサイルで、非常に重くたっぷりとしたシーカースペースがある」とテレンコは説明している。ミリ波レーダーに加え、さらに数百キログラムの爆薬も詰め込めるほどだという。

最新のシーカーとより重い弾頭を搭載すれば、ウクライナ空軍が2013年に退役させた旧式の5V28は強力な対地攻撃兵器になる。射程は大方の情報源に従えば約400キロメートル、パニックになったロシア側プロパガンディストのいうとおりなら約600キロメートルにおよぶ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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