ビジネス

2022.03.31 10:00

ANA Xとサイバーエージェントの提携。主役たちが語る「未来データ」の価値

ANA X井上社長(中央)とサイバーエージェント内藤常務を迎え、DX JAPAN植野代表が提携の背景を聞いた。

DXが各所で叫ばれる今の時代は、その領域と取り組みの広さから、「どこで何が起きているの?」という疑雲猜霧(ぎうんさいむ)のような状況でもある。
 
その雲を晴らすような取り組みが生まれた。2022年3月、ANA Xとサイバーエージェントが、デジタル広告配信事業に関する業務提携を発表した。主役らが見え、異業種で業界のトップ同士の取り組みに期待が集まる。さかのぼること、わずか1年前。ANA Xの井上慎一からグループのデジタルプラットフォーム事業構築につながる着想を聞いたDX JAPANの植野大輔は、井上とサイバーエージェントAI事業の中心人物、内藤貴仁を引き合わせた。ここから全てがスタートする。

1年足らずで実現したタッグ


植野大輔(以下、植野):2021年4月にANAグループのプラットフォーム事業会社として始動した「ANA X」が2022年3月17日に、サイバーエージェントとデジタル広告配信事業で業務提携したというニュースには、カジュアルな言い方ですが、本当にワクワクしました。やはり、LCCのPeach航空会社立ち上げに携わった井上さんと、サイバーエージェントで早くからAIの導入に取り組まれてきた内藤さん、お二人の厚みによる相乗効果で生まれるこれからの展開に胸が躍るのだと思いますね。

ANA X・CEO井上慎一(以下、井上):まったく同じ気持ちなんですよ。サイバーエージェントさんのお話を頂戴してから、ワクワクしているんですよ。このワクワクは何なのか考えたんですが、まったくの異業種のサイバーエージェントさんとのケミストリーというか、シナジーによって新しい価値、新しい顧客、新しい市場が創出されるのではないかという期待から来るワクワクなのだと、整理ができたんですよね。

井上社長
井上慎一|ANA X代表取締役社長(取材時)。LCCのpeachを飛躍させた後、ANA代表取締役専務執行役員に。同時に、ANA Xのトップとしてグループのデジタル化とデータ活用領域を牽引。4月1日よりANA代表取締役社長に就任。

Peach立ち上げの際も、安い価格だけでは面白くないから、ターゲットを女性にしたり、色々と挑戦したんです。ANAから顧客を取るのではなく、学生層や主婦層という新しい顧客層を取り込んで、運賃が高いという垣根を壊したことで、新しいニーズが生まれた。今回もサイバーエージェントさんとタッグを組むことで、同じようなことが高い確率で起きるのではないかと。だからワクワクしたんですよね。

植野:今から1年前に、井上さんとお会いした時に、井上さんが「ウォルマートのエクスチェンジというビジネスモデルがある」とおっしゃっていたのには、正直驚きました。日本ではファミリーマートが先行して取り組んでいますが、まだあまり知られていないデータを活用した最先端の広告事業モデルです。井上さんからデータを基に事業拡大につなげていきたいというエアラインの経営のリーダーとは思えない斬新な発想が出てきて、そうであれば、サイバーエージェントさんに話を聞いてみたほうがいいですよと、広告事業のイノベーターである内藤さんをご紹介させていただいたというのが今回の経緯になります。

エアラインとウォルマートのような事業モデルを作るという展開になって、サイバーエージェントさんの最初の反応はどうでしたか?

サイバーエージェント常務執行役員・内藤貴仁(以下、内藤):小売のように、膨大なデータを持っている会社と広告事業を一緒にやらせていただく機会が出てくるのではないかとはずっと思っていました。小売、金融、モビリティ、ヘルスケアは想定内でしたが、現状は小売しかまだ取組みを行っていない。そこへ今回のお話をいただいて、モビリティ×金融(飛行機とカード)のエリアで新しいプラットフォームを創る可能性があると思っていた矢先でしたので、非常に可能性を感じて、僕としてもワクワクしています。大きな産業なので、すごく大変そうだなとは思いますが。

内藤常務
内藤貴仁|サイバーエージェント AI事業管轄 常務執行役員。2001年に新卒で入社後、2010年にインターネット広告事業本部の統括本部長を経て、現職。16年にはAI・DX事業の中核を担うAI Labを立ち上げるなどテクノロジー領域に精通。

植野:前例がないですからね。

内藤:そうですね。今後10年、20年先はリアルビジネスを持っている会社がデジタルに攻め入っていくだろうと思っていましたので、そういう会社とご一緒に挑戦する機会をいただいて、本当にうれしいです。
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文=中沢弘子 写真=苅部太郎

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