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2018.05.29 11:00

「クリエイティビティは標準化できる」 ヒットメーカーが教える法則

入山章栄 早稲田大学ビジネススクール准教授(左)と中村洋基 PARTYクリエイティブディレクター(右)

気鋭の経営学者、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄と、クリエイティブラボ PARTYのファウンダー兼クリエイティブディレクターの中村洋基との対談。第1回では、人の心を掴む言葉とは何か、AIにビジョンは作れるのか、などのテーマで議論が展開した。対談第2回では、新たな価値を生み出すためには何が必要なのか、その方法を探る。(本記事ではダイジェスト版をお送りします。全文はこちらをご覧ください)


制限によって創造性は高まる

入山章栄(以下、入山):中村さんが、クリエイティビティの高い仕事を効率よく行うために、工夫されていることがあれば教えてください。

中村洋基(以下、中村):いま気になっているのは「広告クリエイティブはもっと科学できる」ということ。まず各プロジェクトにマーケティングチームを入れています。例えば、アプリのダウンロードを促す15秒のCMがありますが、沢山ダウンロードされるCMと、全くされないCMがあります。

その原因を探っていくと、「アプリのアイコンをCMの画面に出すこと」や「“詳しくは◯◯を検索”と表示してクリックするモーションを入れる」など、必ず作用するポイントがあることがわかったんです。ならばそれをCMづくりのルールにすればいいと。

入山:興味深いですね。でも、そういうルールを課してしまうと、逆にクリエイティビティの阻害につながらないのでしょうか。

中村:私も最初はそう思ったんです。でも、そちらのほうが効率的にデザイン・コンテンツが良くなり、結果も上がることが多いです。

つまり、最初に何も描かれていない白紙をクリエイターに渡すのではなく、「ここだけは守ってほしい。その代わり、あとは全部好きなようにやっていいよ」と制限したほうが、アイデアも考えやすかったり、制限されていない部分の発想が飛躍したりするんです。最近は社内でこう言っています。「リサーチは綿密に、でも仮説は大胆に」と。

入山:面白いですねえ。実は、デザインの力は経営学では説明が難しいのです。特にサイエンス志向の強いアメリカを中心とした欧米の経営学がそうなんですが、対象物を細かな要素に還元し、相互のメカニズムを解き明かす「要素還元主義」が根本にあるからだと、私は理解しています。

一方で、いくら細かく分解された「良いもの」を組み合わせても、それで全体が力を発揮できるとは限らない。重要なのは、その要素の組み合わせ方、すなわちデザインの力です。この力は還元主義のアプローチでは理論化が難しいので、考察対象にするのが極めて難しいんです。

中村:ただ、16年も現場にいる私からすると、「クリエイティブとは何か」ということが日本では言語化、標準化されていなすぎるという逆の印象のほうが強いんですよ。アメリカのピクサーにそれが表れています。ピクサーの最高執行者、ジョン・ラセターは彼自身が有能な映画監督でもあるわけですが、作品の監督は別の若い才能たちにまかせ、最高のクリエイティビティをチームで生み出していく。

外れがない作品を連発できる仕組みがうまく機能しているんです。つまり、個の才能によって作品のクオリティが大きく損なわれづらいメソッドをつくっているということです。極端に言うと、クリエイティブのいくつかの部分は標準化できると思っています。

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入山章栄◎早稲田大学ビジネススクール准教授。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。98年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。 三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号を取得。 同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーに就任。2013年から現職。

中村洋基◎PARTY クリエイティブディレクター、電通デジタル顧問、VALU取締役。電通で多くのWebキャンペーンを手がけた後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。国内外250以上の広告賞の受賞歴がある。最近の代表作に、個人の価値を売買できるSNS「VALU」Eテレ「バビブベボディ」「マッハバイト」など。TOKYO FM「澤本・権八のすぐに終わりますから。」パーソナリティ。

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